研究課題/領域番号 |
22K18520
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
濱中 新吾 龍谷大学, 法学部, 教授 (40344783)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 選好の改ざん / 社会的望ましさバイアス / 社会的決定 |
研究実績の概要 |
本年度は研究着手のため、理論分野と実証分野の把握が中心となった。オンライン開催の研究会に出席し、文献研究を進めた。これまでのところ、中東社会におけるジェンダー研究はフィールドワークによる人類学的地域研究アプローチが中心であり、本研究課題のような実証的研究の成果は希少である。実証の可能性においては行動経済学の理論に基づくフレームワークが幅広いパースペクティブを有しており、本研究課題においても有用だと感じられた。 具体的な基礎理論はTimur KuranのPrivates Truths, Public Liedsの中に見られる。この理論研究は実証研究で「社会的望ましさバイアス」として認識されているものを追求し、思考の深化を試みている。Kuranは「選好の改ざん」という概念を用いている。これは単に「社会的に望ましいとされる意見や態度」が存在するために自分の選好を隠すだけにとどまらない。集合的に考えると、あらゆる人間が選好を改ざんすることで社会全体としては改ざんされた意向が世論となって社会的な決定を下す。例えば、「特定の属性を差別の対象として良い」とする選好改ざんが集合的に発生すると、その意向は社会的決定となって構成員を拘束する。社会の外部から「かかる差別は否定されねばならない」という規範が持ち込まれたとしても、社会的決定が宗教のような社会的に共有される強力な規範によって正当化される時、外部からの規範は差別を覆すような力にはならないだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究計画が依拠し、仮説を導出するための基盤理論を探すのに多くの時間を費やすことになった。ジェンダー研究の多くは参与観察で得た情報を一定の見方で解釈するものなので、実証研究の参考にはなりづらいのが実態である。
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今後の研究の推進方策 |
実験計画を組み上げるために、基盤理論であるKuran(1997)をジェンダー研究のトピックに接合する必要がある。今年度は理論の実装に労力を注ぐことになるだろう。その上で社会発展理論の先行研究にも目を配っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は理論研究と先行研究調査に時間を取られてしまい、世論調査の実験計画を立てるプロセスにたどり着けなかった。萌芽研究というカテゴリだということもあり、テーマの新規性から仮説検証の段階に入るのに時間がかかってしまい、その結果として計画通りの予算執行ができなかった。
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