研究課題/領域番号 |
22K18545
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
平井 太郎 弘前大学, 大学院地域社会研究科, 教授 (70573559)
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研究分担者 |
伊高 健治 弘前大学, 地域戦略研究所, 教授 (40422399)
花田 真一 弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (90636458)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 集落機能 / 人口減少 / 計量時系列分析 / 機械学習 / アクションリサーチ / 地域づくり / 農村型地域運営組織 / 粗放的利用 |
研究実績の概要 |
農林水産省の農林業センサス(農業集落調査)、国勢調査、総務省過疎センサスのデータを過去10年分に遡って、集落単位で統合したデータベースの構築を進めている。それぞれの集落単位が農業集落、統計上の小地域、行政区と異なっており、また行政区に関してはポリゴンデータがないために1つ1つの集落ごとに整合をとりながら、面積按分法を用いて互換が可能なデータベースを構築している。これをもとに機械学習を取り入れた計量時系列分析を行う予定である。 並行して、2022年後半に問題化した農業集落調査の廃止に関して社会学的な知見を提供するために、1955年以降の農業集落調査における集落の規定について文献調査を進め、農村計画学会誌などで公表した。これにより、研究計画当初は集落とは上記のようにポリゴンデータ化可能な空間的境界をもつ存在であると自明視していたのに対し、農業集落調査の初期(1955年から1965年まで)においては、社会関係や集団、慣習の集合体として農業集落が規定されていることが確認された。こうした規定が存在し、かつ政策に影響を与えていた事実は現在では忘れられているものであるのみならず、人口減少と低密度居住が進む今日や将来における集落を構想するうえで、重要な学術的発見(再確認)であると言えた。 さらに、2025年からの中山間地域等直接支払制度の改定にあわせ、農用地や用排水路、農道などの維持管理といった基本的な集落機能の維持が危ぶまれる集落が、2025年の農林業センサスや総務省過疎センサスの結果を待たずにすでに顕在化している実態があることを踏まえ、そうした集落群に対するアクションリサーチの準備を先行的に進めた。それらの集落群の一部は国の農村型地域運営組織のモデル事業などに指定され、集落機能の強化が目指されているが、その意図が十分に現場に伝わっておらず政策効果が上がらない危険性があると確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
過疎センサスの公開に当たっての秘匿化処理の取扱いと、農林業センサス、国勢調査、過疎センサスにおける集落単位の突合とに予想以上に時間を要したため、データベース構築とその計量分析に遅れが生じている。その一方で、集落概念の言説分析や政策的な影響を被る集落に対するアクションリサーチといった質的分析の成果は、当初の想定以上に上がった。
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今後の研究の推進方策 |
データベース構築を早急に進めていち早く計量時系列分析に移るとともに、集落に対する政策が2023年から25年にかけて大きく変化することが予想されるようになっており、そうした政策の影響の定量的把握と質的な分析・介入の双方を同時並行で進める必要があると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
計量分析のための最重要データである過疎センサスについて総務省に公開請求を行ったところ、全く別に公開請求を行って入手して執筆された新聞記事の影響により、秘匿化処理に予想以上の時間を要したため、データベース構築に遅れが生じ、計量分析担当の分担者において予定していた設備の準備に入れなかった。次年度は、データそのものは入手できているので当初の計画どおりデータベース構築とそれにもとづく計量分析を速やかに進める。
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