研究課題/領域番号 |
22K18554
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研究機関 | 東北福祉大学 |
研究代表者 |
石塚 裕子 東北福祉大学, 総合マネジメント学部, 教授 (80750447)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 対等性 / 当事者参画 / 共生社会 / 小さな声 |
研究実績の概要 |
本研究は、支え手と受け手という関係性を超えた多様な主体の参画と連携による地域共生 社会における「対等性」とは何かを探求することを目的としている。その「対等性」を具現化している事例として、イタリア、トレント市の「ファーレ・アッシエーメ(みんなでやろう!)」という精神保健医療のメソッドに着目している。この取り組みは、2000年頃からはじめり、現在では精神保健局だけでなく、他の団体の取り組みにも援用されている。 2023年度は、昨年に引き続き2回目のトレント訪問調査を行った。選挙で選ばれたセンター職員、当事者、当事者家族、市民ボランティアで構成されているGPPという精神保健局の方針決定機関の会議の参与観察を行い、専門家と当事者との対等性について確認した。GPPという枠組みができていたことで、専門家のトップが交代してもGPPという組織の位置づけにより専門家と当事者の「対等性」が担保されていることが確認できた。また、当事者と市民の対等性を確認するために、当事者、家族、職員が講師となって精神保健福祉をテーマとした啓発事業「Fare」に複数回、参与観察を行った。企画段階から3者が一緒に考え実施するプロセスにより、そこに参加する市民へ「対等性」の理解が広がっている様子を確認することができた。 また、精神保健以外の社会的協同組合を複数訪問した。精神障害以外の障害者・児の支援組織、空き家の活用による高齢者や貧困者の支援、難民支援など多様な社会的弱者を包摂する団体が、いずれも町の中心に立地することを大切にしていることがわかった。物理的な立地と、当事者を中心において一緒に考えるプロセスにより、社会との多様な接点を必ず確保することが「対等性」を担保する重要な要素なっていることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2度の訪問調査を経て、イタリア、トレント市における取組の全体像が把握され、地域共生社会において対等性を担保する要素が理解されてきた。入手した文献などでさらに情報を補強し、日本で援用していくための留意点などを整理していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
イタリア、トレント市の取り組みと倉敷市真備町のNPO法人岡山マインド「こころ」の20年間の取り組みと比較分析していく。また、シンポジウムを通じてイタリアチームとの交流を通じて、相違点を明らかにする。そして、日本での地域共生社会における対等性を担保していくための施策を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末の出張旅費の精算処理のタイムラグにより残金が生じているが、翌年度に精算予定である。
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