研究課題/領域番号 |
22K18561
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
吉良 智子 日本女子大学, 家政学部, 研究員 (40450796)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | ハラスメント / ジェンダー / 美術 / アート / 教育 |
研究実績の概要 |
現代日本社会において人権上の観点から、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントなどの各種ハラスメントに対する異議申し立てが行なわれつつあるが、それらが社会的問題として認識されたのはごく近年のことである。特に美術界においては、よりよい作品を創造するための「指導」や「教育」などの美名の下、歴史的にもハラスメント行為が容認されてきた。しかもそうしたハラスメントは主に男性から女性に向けた行為が大半といっても過言ではない。本研究では、主に近代・戦後日本の美術界におけるハラスメント行為の歴史をジェンダーの視点から考察するものである。
当該年度は戦前に刊行された各種美術雑誌(『みづゑ』『アトリヱ』『中央美術』『国画』『塔影』など)に掲載された美術批評を調査した。その結果、美術批評の書き手のジェンダーはほぼ男性であること、その書き手たちは専業の評論家を中心としていること、女性が書き手の場合はあるものの、批評を専業としている者ではなく、他分野で功績を挙げた女性が採用されていたことが分かった。
また女性の作品に対して作家のジェンダーに基づいた不当な批評や評価があることが確認された。現代美術のハラスメントがジェンダーアンバランスな環境下で生じる場合が多いこと、現代においてもジェンダーに基づいた不当な批評が存在することを鑑みると、ハラスメントが今日においてのみ多発しているのではなく、歴史的に存在していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
図書館などでの資料調査が順調に進み、資料を蓄積できている。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度は調査対象が戦前だったが、今後は戦後にまで拡大し、できれば作り手と評価者のみならずモデルに関する記事などにも関心を広げて調査したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
近郊の図書館などでの資料調査が想定以上に進んだため旅費等が節約できた。次年度は資料調査費用等にあてる予定である。
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