研究課題/領域番号 |
22K18582
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
滝沢 龍 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 准教授 (30420243)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 人生早期ストレス / 逆境 / 子育て世帯 / 見える化 / 予防 / 世代間伝達サイクル / 親子2世代データ / 養育環境 |
研究実績の概要 |
本研究は、逆境体験を受けてすでに成人期に至ってしまった母親の長期的な健康リスクを低減する方略の検討も不十分な中、さらに次世代の子どもの心身の健康にまでアウトカムを拡張して、次世代への世代間伝達サイクルにまで役立つ保護因子についての知見を得ようとする挑戦的研究である。子ども世代への早期対策として世界各地で乳幼児・児童期の保育介入が行われる一方で、「逆境を体験した親世代はもはや手遅れで克服する支援はできないのか?」との問いに答えた科学的検証は不十分である。本応募研究はすでに成人期にある母親を対象に、どのような支援が世代間伝達サイクルを断ち切ることに役立つかについて示唆を得る。親子2世代に役立つ支援方略の開発に資する知見を得ることで、将来の教育臨床の支援実践や社会教育・福祉の施策への示唆を得る点に意義がある。世界的にも2世代の大規模コホートデータによる検討は乏しく、探索的性質の強い芽生え期の研究計画であるが、これまでの学術的アプローチを乗り越えることに挑む。2年目の本年度の研究実績は、国内外の複数の大規模コホート調査の2世代データを用い、逆境体験を有する母親自身の健康リスクへの長期的影響(青年期から中年期への変化)に違いをもたらす保護因子を見出すための検討し、認知的感情制御や認知的柔軟性やの調整効果を見出した。それと合わせて国内での比較研究ができるように約4000名を超える労働者を継続的に縦断調査を開始し、子育て中の親世代の被検者をフォローアップ調査している。また介入効果について検討もランダム化比較試験で開始した。これらの検討について国際学会や国内学会で研究発表や学術雑誌に公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内外の複数の大規模コホート調査の2世代データを用い、逆境体験を有する母親自身の健康リスクへの長期的影響(青年期から中年期への変化)に違いをもたらす保護因子を見出すための検討を継続している。国内ではすでに4000名を超える労働者を縦断的にフォローアップ計測しており、その中の子育て中の親世代の被検者にフォーカスした解析を行っている。予防的な介入効果も検討するため、ランダム化比較試験も開始している。このように、国内外の研究データを解析した結果を国内外の学会や学術論文でも公表を始めており、順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
新年度では、国内外の大規模コホート調査における2世代データの解析を開始し、逆境体験を有する母親自身の健康リスクへの長期的影響(青年期から中年期への変化)に違いをもたらす保護因子と、その子どもの健康リスクへの影響の違いをもたらす保護因子の共通点と相違点を見出す検討を継続する。国内の親世代の調査を約4000名を開始し、そのフォローアップ調査の中で子ども世代の調査を追加することで、海外データとの国際比較検討を行う。介入効果を検討するためのランダム化比較試験の結果がまとまり次第、これまでの検討を組み合わせて、国内外の学会発表や学術雑誌への公表を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の想定に反し、国外のコホート研究のデータクリニーニングに時間がかかっていることにより、共同研究会議が延期になったため、次年度に使用する必要が生じた(2024年7月開催予定)。
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