研究課題/領域番号 |
22K18583
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
西浦 慎悟 東京学芸大学, 教育学部, 講師 (50372454)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | イオン / 原子構造 / 輝線天体 / 可視光天文学 / 狭帯域フィルター / 狭帯域撮像観測 / 冷却CCDカメラ / 性能評価 |
研究実績の概要 |
本研究では、東京学芸大学の40cm光学望遠鏡に複数の狭帯域フィルターを搭載することで、天体の様々な輝線撮像データを取得し、これらから輝線天体の物理的・化学的性質をイオンという観点から考察する科目横断的な学習教材を作成することを試みる。 初年度にあたる2022年度は、本研究の観測装置である東京学芸大学40cm望遠鏡と冷却CCDカメラの性能評価と、最も一般的な輝線である水素イオン起源のHαλ6563輝線と、その短波長および長波長側に隣接する窒素イオン起源の[NII]λ6548輝線と[NII]λ6583輝線を観測対象とした4枚の狭帯域フィルターの設計と作成を行った。 40cm望遠鏡と冷却CCDカメラの性能評価では、1) 冷却CCDカメラの冷却時間、2) ドーム・フラット画像の平坦性の確認、を行った。1) については、冷却CCDカメラの設定冷却温度-10℃~-30℃において、冷却開始から6分~7分でCCDの冷却が完了することが確認できた。2) については、既存の広帯域フィルターであるJohnson-Cousins システムのV, Rc, Icフィルターを用いて、設定冷却温度-10℃におけるドーム・フラット画像とトワイライト・フラット画像の比較を行った。三つのフィルターのいずれにおいても、トワイライト・フラット画像に比べて、ドーム・フラット画像の中央付近が暗く、外縁部が明るくなる傾向が見つかった。ただし、この違いは、定量的にはV, Rc, Icバンドにおいて、0.69%、0.71%、0.57%程度と小さく、ドーム・フラット画像はトワイライト・フラット画像の代用として使用可能であることが確認された。 狭帯域フィルターについては、Hα、[NII]λ6548、[NII]λ6583の3輝線の画像を分離することを目的とした、4つの狭帯域フィルターを設計、作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は当初の予定よりも6ヶ月程度遅れている。 遅れた要因の一つは、4枚の狭帯域フィルターの製作を依頼した業者側で、注文過多のためにその製作が遅れてしまい、納入が2022年12月頃となったこと。そして、もう一つの要因は、東京学芸大学40cm望遠鏡の観測時間が、研究室の卒業研究や修士論文研究のために当初の予想以上に投入されたことである。
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今後の研究の推進方策 |
今後必要な作業は、本年度作成した4枚の狭帯域フィルターを用いた、1) 撮像観測の基礎データの取得(特にドーム・フラット観測手法の確定)、2) 輝線天体の観測、3) 観測データの解析方法の検討、である。 特に 1) は、曇天・雨天時、または、昼間でも観測データが取得可能である。また 2) は、研究室の他の卒業研究や修士論文研究のための観測との競合を避けられるように、観測時間の割り当てを工夫したい。特に現在の観測装置では、ほとんど全ての卒業研究生や大学院生は、広帯域フィルターのみを用いた観測を行っており、狭帯域フィルターを用いる観測を行うことはない。観測中にフィルター交換を行うことは観測効率の低下を招くため、広帯域撮像観測と狭帯域撮像観測の棲み分けを効果的に設定する必要がある。 上記によって得られたデータを元に、3) の解析方法の検討を、急ぎ進めたい。 上記に加えて、Hα輝線と同じか、これに準ずるほど強度が強い酸素イオン起源の[OIII]λ4959輝線と[OIII]λ5007輝線などに対応した狭帯域フィルターの設計と作成も進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の中核を成す狭帯域フィルターとフィルター・ホイールの両方が、当初想定していた価格では入手が難しくなり、狭帯域フィルターの構成を一部変更し、また、フィルター・ホイールの購入を見合わせたことから、次年度使用額が生じた。これらについては、次年度以降購入を予定している狭帯域フィルターの制作費として使用する。
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