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2023 年度 実施状況報告書

インクルーシブなディベート教育方法開発

研究課題

研究課題/領域番号 22K18593
研究機関九州大学

研究代表者

井上 奈良彦  九州大学, 言語文化研究院, 特任研究者 (90184762)

研究分担者 上土井 宏太  鹿児島大学, 総合科学域総合教育学系, 助教 (90983198)
加藤 彰  九州大学, 言語文化研究院, 学術研究者 (80818360)
ハーン アーロン  九州大学, 言語文化研究院, 助教 (40712435)
李 相穆  九州大学, 言語文化研究院, 教授 (60400298)
ODwyer Shaun  九州大学, 言語文化研究院, 教授 (90786740)
久保 健治  九州大学, 言語文化研究院, 学術研究者 (90818361) [辞退]
竹中 野歩  九州大学, 言語文化研究院, 学術研究者 (50818383) [辞退]
張 小英  九州大学, 言語文化研究院, 共同研究者 (00914962) [辞退]
研究期間 (年度) 2022-06-30 – 2025-03-31
キーワードディベート / インクルーシブ教育 / 議論教育 / 教育機会の平等 / 機械音声
研究実績の概要

本研究では、障害によりディベートへの参加が難しい人や、ディベートへの苦手意識を持つ人に向けて、アバターや音声変換等のツールを利用することで、ディベートへの参加障壁を低減する方法を探索している。一方で、ディベートにおいて重要な要素のひとつは審判が下す「判定」である。本来は議論の内容で判定が下されるべきであるが、性別・外見・話し方等が判定に影響する場合もあることが先行研究で指摘されてきた。前年度は、少人数のディベート経験者の学生を対象に、人間の音声のディベートと読み上げソフトを利用した機械音声ディベートの両方を判定・評価してもらうパイロット実験とインタビューを行い、機械音声への抵抗感は予想より少なく、判定に大きな影響は出ていない可能性が高いと分かった。
これを踏まえ、2023年度は同様の実験をディベート未経験者に対し実施した。具体的には、大学1年生の16名のクラスと20名のクラスをそれぞれ2グループに分け、各実験群に機械音声ディベートあるいは人間音声ディベートを視聴してもらい、判定とその理由、各スピーカーへの評価を出してもらった(判定の出し方については研究代表者が説明した)。その後、音声の聞き取りやすさや評価等に関するアンケート調査も実施した。人間音声ディベートについては、ディベート未経験者がジャッジを行う際には「話し方」や「早口」といったスピーチの内容以外の要素が判定に幾分影響を及ぼす可能性があることや機械音声への若干の抵抗感があることが分かった。
また、音声変換ツールとZOOMのアバターを用いて、ディベート経験者の学生に実験的にディベートの試合を実施してもらい、「インクルーシブディベート大会」が実現可能かどうか検討した。音声変換ソフトの音声調整等、技術的な課題が残されているが、今後もよりスムーズに「インクルーシブディベート」を実施できる環境の模索を続ける。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2023年度は前年度末に設定した計画通り、2022年度にディベート経験者へ実施した小規模の実験を拡大実施した。ディベート経験者に機械音声ディベートと人間音声ディベートへの判定と評価を出してもらう実験とインタビューの実施は継続しつつ、ディベート(ほぼ)未経験者の大学新入生に対し同様の実験とアンケート調査を行った。未経験者の場合、議論の内容が難しいほど、機械音声ディベートへの抵抗感が増大する可能性が認められた。また、人間音声の場合は話す速度や話し方が判定に影響を与える可能性がある。これらを考慮に入れても、機械音声ディベートは内容を聞き取って議論を理解するには十分であると考え、機械音声やアバターを利用した「インクルーシブディベート」は実現の可能性が大いにあると考えるに至った。
そこで、ディベート経験者の学生数名を集め、実験的に即時音声変換ソフトとZOOMアバターを利用したディベートの試合を行い、使用感についてインタビューを実施した。経験者からは身振り手振りや聴衆に訴えかけるような要素が無いことを残念がる声もあったが、見た目や性別、話し方といった要素が判定へ与える影響は少なくなるだろうという意見もあった。また、この実験で撮影したディベート動画を経験豊富なジャッジ数名に見せて判定を出してもらったが、人間音声と機械音声では特に違いは無いようであった。
また、2023年度に実施された各種ディベート講座や大会においては、研究分担者の上土井・ハーン・オドワイヤー・李・加藤、研究協力者の竹中・久保・張等がジャッジや指導にあたり、ディベートの試合における議論や判定のデータ収集・分析を行った。研究代表者の井上と分担者の上土井を中心に先行研究の再検討も継続している。

今後の研究の推進方策

2024年度は、2023年度に試行した音声変換ソフトとZOOMアバターを利用した試合を基に、より完成された形の「インクルーシブディベート」を模索する。音声変換ソフトにより変換された機械音声は元の人間の声の高さが影響を与えるため、性別をマスキングするには調整が必要である。どこでも誰でも簡単に「インクルーシブディベート」を実施できるよう、引き続き様々な音声変換やアバター等のツールの試行を繰り返す。また、ディベートへの苦手意識が強い学生や障害により参加が難しい学生にもテストディベートに参加してもらい、使用感についての意見も取り入れる予定である。最終的には「インクルーシブディベート・ミニ大会」を実施するか、「授業ディベート」としての形を整え、教育現場へ導入しやすくする方法を検討する。

次年度使用額が生じた理由

2023年度は研究代表者の井上が退職後、初めて学内のレンタルスペースを借りたため、光熱費にかかる費用の総額が年度初めには分からなかったが、想定より大幅に安価であったため次年度使用額が生じた。また、2023年度の研究成果を学会報告するために井上が東京出張を予定していたが、やむを得ない事由で出張を取りやめたため、旅費に余りが生じた。
2024年度はインクルーシブディベート大会の実施あるいは授業ディベートへの導入に向けた試行のために、多くの実験を行う必要があり、実験協力者への旅費や謝金に次年度使用額を当てる。最終年度の直接経費の使用計画は以下の通りである。テクニカルスタッフ・アルバイト雇用:80万、学会報告のための旅費:20万、代表者と学外分担者の研究打ち合わせ、データ収集のための旅費:20万、実験参加者への旅費と謝金:15万、(代表者が退官しているため)学内レンタルスペース利用料金及び光熱費:30万

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] 音声変換技術を用いたインクルーシブディベートの実現可能性に関する研究2023

    • 著者名/発表者名
      上土井宏太、竹中野歩、中川詩奈、井上奈良彦
    • 雑誌名

      九州コミュニケーション研究

      巻: 21 ページ: 47-64

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] How Far Can We Go in Computer-Assisted Debating?2023

    • 著者名/発表者名
      Inoue, Narahiko
    • 雑誌名

      RicercAzione

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.32076/RA15303

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] An Exploration of Introducing a Judge Evaluation System in the Japanese Debating Circuit2023

    • 著者名/発表者名
      Kota Jodoi, Kenji Tomita, Narahiko Inoue
    • 雑誌名

      Debate and Argumentation Education: The Journal of the International Society for Teaching Debate

      巻: 5 ページ: 35-58

    • DOI

      10.60264/debate.5.0_36

    • オープンアクセス
  • [学会発表] インクルーシブディベートの実現に向けた課題と展望2024

    • 著者名/発表者名
      上土井宏太、竹中野歩、中川詩奈、井上奈良彦
    • 学会等名
      第10回ディベート教育国際研究会大会
    • 国際学会
  • [学会発表] ICTを活用したディベート教育の可能性2023

    • 著者名/発表者名
      上土井宏太
    • 学会等名
      日本教育工学会研究会
    • 国際学会
  • [学会発表] 社会課題解決に向けたディベート教育の重要性2023

    • 著者名/発表者名
      上土井宏太
    • 学会等名
      第30回日本コミュニケーション学会九州支部大会

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公開日: 2024-12-25  

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