研究課題
本研究の目的は、デジタルネイティブの時代において、リアル世界とサイバー世界が越境する大学像や学問観を問い直すことにある。いまやデジタルネイティブ世代が学生や若手教員になる時代である。研究者や大学も否応なくサイバー世界に取り込まれ、論文データベースに基づく研究評価やランキング等のサイバー世界の動きに左右されている。もはや、リアルな世界のみでは、大学や学問を理解できない。そこで、サイバー世界を利用した研究様式の実態を調査したところ、ソーシャルメディア(SNS)の影響が大きいことがわかったので、SNSと知識生産の関係に焦点を当てることとした。また、知識生産におけるSNSの意味や位置付けは、大きく、かつ急速に変化しており、最新の動向を論述する枠組みがない。そこで体系的な分析は行わず、事例を探索し、事例の包括的分析を加えるというアプローチを採用した。事例の分析から得られた結論は以下のようなものである。(1)SNSが普及した結果、合理性や真実性が意味を失い、さまざまなものがアテンション(いかに関心を集めたか、注目されたか)で評価されるアテンション・エコノミーが浸透した。(2)大学や学問はそれだけで存在するわけでなく、世界的な政治動向とも関連している。2022年以降は移民排斥的な政治動向や社会の分断が顕在化しており、大学や学問にも影響を及ぼしている。その結果、(3)大学批判的な大学像や学問観が顕著になってきた。(4)これらの変化は、数年前までは、予想もできなかったものである。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
科学技術社会論研究
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名古屋高等教育研究
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