研究実績の概要 |
COVID-19の世界的流行は、一般市民に深刻な不安をもたらした。この状況で、SNSや一部のマスメディアにおいて科学的根拠のない情報が頻繁に流されることがあった。薬剤師は「街の科学者」として、正確な医療情報の提供者であり、健康に関する科学的根拠に基づいた助言を市民に提供する責任がある。この研究は、全国の薬剤師と登録販売者を対象に、彼らが疑似科学的主張にどのように対処するか、その行動特性を調査し、薬学教育の向上に役立てることを目的としている。 ランダムに選ばれた1,500の病院、1,800の保健薬局、および1,500の店舗販売業に勤める薬剤師と登録販売者を調査対象とした。科学リテラシー、確率論的推論、疑似科学の認識に関するアンケートを実施した。また仮想の疑似科学製品の広告に対する反応を通じて、行動分析を行った。薬学生を対象にしたSGDを通じて、学生たちは疑似科学的主張への対応方法や薬剤師としての倫理的責任について深く考察する機会が提供された。SGDの結果、学生たちは科学的根拠と疑似科学の区別についてより明確な理解を得ることができた。 アンケート結果に基づく分析から、薬剤師は一般的に登録販売者よりも高い批判的思考能力(アンチPSスコア)を持っていることが示され、性別、社会的背景との関連性も見られた。さらに、「売る」「売らない」という選択を通じて、科学的根拠の重要性に焦点を当てた慎重な対応が見られた一方で、顧客の意向を尊重し適切な情報提供を行う姿勢も確認された。 本研究は、薬剤師と登録販売者がどのようにして疑似科学的主張に対応しているかを明らかにし、SGDを通じて薬学生が得た知見も含めて、批判的思考の重要性と専門教育の有効性を裏付けるものである。また、科学的根拠に基づいた医療の重要性を再認識し、それを社会に広める役割を薬剤師が担うことの重要性を強調している。
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