現在、子どもたちは、メディアの発展とともに、例えばSNS、ゲーム、動画、広告などのメディアに頻繁に曝されており、その結果として不適切な行動、健康阻害、学習遅滞、さらには犯罪に巻き込まれる事件などの悪影響が後を絶たない。学校や地域では、メディアの使用自体に制限や規制を設けたり、危険性を知らせる知識伝達型の教育が行われている。メディアが今後も発展し、魅力が増していく中で、禁止や規制、メディア・リテラシーの強化だけでは十分な危険回避効果が期待できない。そのため、取締り・指示型アプローチから自己制御能力強化のアプローチにパラダイムシフトが必要とされる。本研究では、子どもたちに対して、メディア・エンパワメント、すなわち子どもたち自身の考えや感覚によって、メディアの持つ影響力に気づき、メディアに関わる行動を自身で制御できるようにする能力の強化を目的に介入プログラムの開発および評価を行った。本研究で課題とするメディア・エンパワメントにおいて核となる要素は、子どもたちがメディア利用に伴う危険性に気づきながら、メディア接触に伴う自制心や感情調整能力を高めることであり、大人目線ではなく、児童・生徒の理解が進み、彼らの動機づけに影響を与える教材を盛り込むことであった。初年度では、予備的研究も含めて介入実践のための準備に費やし、次年度では複数の小学校においてプログラムを実践し、それらの効果を検証した。最終年度では広く普及啓発を目指すために、デジタルで生じた問題をアナログで解決することを目指し、カードゲームや双六ゲームを開発した。
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