研究課題/領域番号 |
22K18640
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研究機関 | 米子工業高等専門学校 |
研究代表者 |
堀畑 佳宏 米子工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60649309)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 数学的態度 / 仮説 / 自由 / リベラルアーツ |
研究実績の概要 |
「数学的態度」の定義「全ては仮説から始まるという認識の下に世界に対峙する姿勢」から数学的態度が,何事も一旦は「仮説」として受け入れるという意味で「内的」側面をもつ一方,積極的に世界に解釈を与えるという意味で「外的」側面ももつことを明らかにした. また数学における「自由」についても検討し,一般の数学における観点では「固定された公理系の下でどれだけ豊富に定理を導けるか」(例えるなら楽器の演奏)という側面がある一方,数学基礎論においては「設定する公理を変えた際にそこから導ける,あるいは導けない定理がどれだ変わるか」(例えるなら楽器のチューニング)という側面も持ち得ることを確認し,このことが数学以外の一般の世界観にも通じることを示した.すなわち,私たちは意識的にも無意識的にも,多くの「前提」(=仮説,公理)の下で思考し活動している.その多くは経験や教育によって作られている.まずはそういった「前提」に気づくことの大切さ(数学における公理の設定),次に自由な思考に制限を加えている「前提」を明らかにし修正や改善することの大切さ(公理の修正や改善)を明らかにした. 上記のような制約に気づき,解放していくことはリベラルアーツの大事な一側面であることから,数学的態度とリベラルアーツの関係について明らかにした.一方でリベラルアーツの歴史的な変遷や現代的な特別な意義については十分に明晰化できたとは言えない.これらは次年度の課題となる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「数学的態度」や「リベラルアーツ」の関係性について分析ができた一方,「リベラルアーツ」の歴史的変遷や現代的な意義について十分な分析ができたとは言えない.引き続き次年度において,「抽象化」の概念を通じて双方の関係性について明晰化していく.
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今後の研究の推進方策 |
まずリベラルアーツの歴史的変遷を分析する.次にリベラルアーツの現代的な意義について考察する.リベラルアーツは,グローバル化が進み,情報技術の発展によりコミュニケーションの垣根が取り払われて,多様な価値観が入り混じる中において,自由な発想や思考をする力は益々重要となる.この自由さを支えている一つに,人間の「抽象化能力」があると考えられる.抽象化能力について体系的に分析し,数学的態度との関連性を明らかにする.また数学的な思考や計算が,新たな発想へと導く可能性についても考察する.
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年1月に開催した研究会「第8回 山陰 基礎論と数学およびその周辺の研究集会」の研究報告集の制作費として残していたが制作が遅れたため,次年度に制作し使用する予定である.
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