研究実績の概要 |
行為している感覚や外界の変化を引き起こした感覚を指す自己主体感は,感覚運動レベルの制御情報と独立する形で,遡及的に変調する可能性がこれまでの先行研究によって指摘されてきた.本研究では,自身による継続的な行為をしない状況で偶発的なイベントに遭遇した時に,自己主体感がどのように生成され,また遡及的に変調するのかについて検討することを目的にしている.本年度は主に以下の内容に取り組んだ. (1)画面上を移動するカーソルを連続的なボタン押しによって制御しながらターゲットまで運ぶ実験課題において,制御とそのフィードバックまでの時間,制御無視や制御アシストの挿入など様々な実験条件が採用され,主体感が計測されてきた(e.g., Oishi, Tanaka, & Watanabe, 2018,PLOS ONE; 2019, Acta Psychologica).これらの研究領域に加え,その他関連領域まで範囲を拡大して文献の整理を行った.その後,研究デザインの精緻化を進めた. (2)到達運動実験を実施するための環境セットアップを進めた.例として運動前・運動中・運動後に視聴覚刺激によるフィードバック呈示がプログラミング制御により可能になった.また運動とフィードバックとの間に時間的遅延や空間的歪みの挿入も実装した. (3)運動制御,運動学習および自己主体感に関する自身の研究を含めた先行研究の知見を整理・体系化し,その上で応用場面を想定したときに生じる課題について考察を行った.その内容について「主体的な行為の認知システム」という演題で招待講演を行った.
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