研究課題
本研究ではイヌの交換行動が、自他の価値理解に基づいて行われているかを明らかにすることを目的とした。さらにイヌの交換行動が、家畜化の過程における内分泌系の変化に基づいた、認知的な協力行動の芽生えであると仮説を立て、交換行動とホルモン分泌との関連を見出すことも目的とした。【方法】本研究では、1)イヌが自身にとっての物の価値を理解しているか、2)相手の価値に応じて物に対する行動を変えるか、3)自身と相手の異なる価値を理解して物の交換を行うのかの3段階の課題のもとに以下の実験を行う。また、これらの結果が家畜化の過程で生じた内分泌系の変化と関連しているかを調べるために、4)ホルモン測定とその分泌に関わる遺伝子多型の調査の4課題に取り組む。【2023年度の結果】今年度は、課題2~4を実施した。すでにイヌ自身が持っている玩具よりも実験者が持っている玩具のほうが好みの順位が高い場合に交換に要する時間が短縮されることが見いだされているが(課題1)、課題2では、イヌの選択行動に明確な傾向は見出すことができなかった。課題3では、実験者の玩具への好みを示す演技の前後では、イヌと実験者がもっている玩具の順位と演技前後との間に有意な交互作用が見いだされた。また、この交換に要する時間はイヌの月齢が高いほど短くなることがわかった。課題4では、交換行動と尿中オキシトシン濃度の間に有意な正の相関がみられた。コルチゾールと行動の間に関連は見出せなかった。遺伝子型と行動との関連については現在解析中である。
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Peptides
巻: 177 ページ: 171224
10.1016/j.peptides.2024.171224
The Journal of Physiological Sciences
巻: 73 ページ: 9
10.1186/s12576-023-00863-7