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2022 年度 実施状況報告書

マカクサルの睡眠・安静覚醒時の「思考実験」遂行における前頭極の役割

研究課題

研究課題/領域番号 22K18665
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

宮本 健太郎  国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, チームリーダー (20778047)

研究分担者 山形 朋子  東邦大学, 医学部, 助教 (90584433)
研究期間 (年度) 2022-06-30 – 2024-03-31
キーワード前頭極 / 睡眠 / 反実仮想 / 思考実験 / 霊長類 / メタ認知
研究実績の概要

睡眠時・安静覚醒時にはマインドワンダリングと呼ばれるタスクの計画・実行に従事しない期間がある。ぼんやりしていると形容される状態であるが、顕著に脳活動が増大する脳領域も存在する。本研究は、この期間が思考実験に相当し、マカクサルの機能的MRI実験によって代表者が過去に同定した「新奇性に対するメタ認知判断(無知の知)」に関わる前頭極領域が、睡眠時・安静覚醒時の経験(記憶)の再生、反実仮想、または半事実的思考に重要な役割を果たすという仮説を、マカクサルを対象とした神経生理学実験を通じて因果的に検証することを目標とする。この目標に向けて、2022年度は、サルの全脳活動を機能的MRI法と脳波(EEG)記録法を用いて同時計測する技術を開発した。そして、覚醒・睡眠の間の状態変化とも大きく関連のある「意識の消失」・「意識の回復」に伴う全脳神経回路動態を調べた。その結果、本研究課題でターゲットとする前頭極の神経活動が、意識の状態を反映して調節されており、覚醒状態の変化に伴って他の脳領域との機能的結合をダイナミックに変動させていることが明らかになった。また、本研究課題で、サルでの実証を目指している「睡眠時の思考実験が睡眠後の新奇連合課題に影響する」というアイデアを、健常ヒト成人においても検証する連想課題を開発した。その課題に基づいた予備的な行動実験を開始した。思考実験に対する前頭極の役割についてのアイデアをまとめた査読付き総説論文が米国Cell PressのTrends in Cognitive Sciences誌より出版された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題の目標達成に向けて、前頭極の機能を解明するために、マカクサルの全脳活動を機能的MRI(fMRI)法と脳波(EEG)記録法を用いて同時計測する技術を開発した。具体的には、サルの頭の形と脳の位置にぴったり合った、カスタムメイドのEEGキャップをデザインし、カスタムメイドで作ったMRI撮像用の送受信コイルとともに、頭部を固定したマカクサルの頭部に装着した状態で、EEGとfMRIによる全脳脳活動同時計測に成功した。この技術を静脈連続注射によって麻酔状態を変えられる状況にしたアカゲザル2頭に適用し、覚醒・睡眠の間の状態変化とも大きく関連のある「意識の消失」・「意識の回復」に伴う全脳神経回路動態を調べた。その結果、本研究課題でターゲットとする前頭極の神経活動が、意識の状態を反映して調節され、また、覚醒状態の変化に伴って他の脳領域との機能的結合をダイナミックに変動させていることもわかった。サルの睡眠中の脳活動を計測できるよう、身体を保定された状態で、実験室内にて睡眠をとる訓練を上記2頭の個体に対して実施した。加えて、本研究課題の「睡眠時の思考実験が睡眠後の新奇連合学習へのエンゲージメントに影響する」というアイデアを、健常ヒト成人においても検証する連想課題を開発し、その課題に基づいた予備的な行動実験を開始した。

今後の研究の推進方策

2023年度は、睡眠・安静覚醒中のマカクの前頭極領域と、視覚野や海馬等、前頭極以外の領域の神経活動を、留置多点微小電極で同時記録する技術を開発する。睡眠・安静覚醒中の前頭極の活動促進と随伴する他皮質領域の神経活動を、2022年度までに開発したEEG-fMRI同時記録法と組み合わせて同定する。あわせて、睡眠の前後にサルに簡単な認知課題を課して、「前頭極と他の領域の同期活動が睡眠前の経験に影響を受けて発生し、睡眠後の探索的・試行錯誤的行動を促進する」という仮説を検証することを目指す。ヒトにおいても同様のパラダイムをEEG-fMRI同時記録実験に対して適用し、睡眠中の前頭極と他の脳領域の間の同期活動が、睡眠後の新奇連合課題に与える影響を調べる。

次年度使用額が生じた理由

マカクサルの前頭極は頭部の最前端に位置し、留置多点微小電極を用いて神経活動を記録するためには、レコーディングチャンバーや電極の取り回しなど解決の必要な問題が多く困難で、記録用のデバイスの検討に当初の計画よりも時間がかかったため、留置多点微小電極記録用のシステムの導入の一部を次年度に行うよう計画を変更した。

備考

Miyamoto K, Setsuie R, Miyashita Y. (2022) Conversion of concept-specific decision confidence into integrative introspection in primates. Cell
Reports, 110581. 10.1016/j.celrep.2022.110581に関する紹介

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Imagining the future self through thought experiments2023

    • 著者名/発表者名
      Kentaro Miyamoto
    • 雑誌名

      Trends in Cognitive Sciences

      巻: 27 ページ: 446-455

    • DOI

      10.1016/j.tics.2023.01.005

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 霊長類の未来の成績を予測するための知覚体験に対する展望的社会メタ認知2022

    • 著者名/発表者名
      宮本 健太郎、Nadescha Trudel、Nicholas Shea、Matthew FS Rushworth
    • 学会等名
      第45回日本神経科学学会大会
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Prospective metacognition for subjective evaluation of future self and others in primates2022

    • 著者名/発表者名
      Kentaro Miyamoto
    • 学会等名
      The 15th Annual Meeting of Chinese Neuroscience Society (CNS2022)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [備考] Where the brain weighs information for decisions

    • URL

      https://www.riken.jp/en/news_pubs/research_news/rr/20220705_1/index.html

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公開日: 2023-12-25  

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