研究課題/領域番号 |
22K18668
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉永 正彦 大阪大学, 大学院理学研究科, 教授 (90467647)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | ホロノミック定数 / マグニチュード |
研究実績の概要 |
円周率を表す級数の多くが「ホロノミック級数」と呼ばれるクラスに属していることに注目し、ホロノミック級数の観点から、広く無限級数に関する基礎的な調査を行った。 距離空間の不変量であるマグニチュードについては、従来から "Scattered" と呼ばれる性質を持った有限距離空間に対しては素朴な意味での級数表示が収束するが、一般には収束せずにある種の解析接続を経由して初めて計算可能となる。"Scattered"でない場合でも、正定値空間と呼ばれる有限距離空間に関しては、Borel総和法でマグニチュードを求められることを観察しており、発表手段を検討している。マグニチュードに関してはここ数年、実解析の専門家の参入が活発で、今年度、その方面の進展を取り入れるために、関連する研究集会に出席し、トポロジー、組合せ論、幾何解析や数理物理の専門家との議論の機会を何度か持った。その結果、マグニチュードの圏化とされるマグニチュードホモロジーをホモロジー群に持つような空間対「マグニチュードホモトピー型」が導入された。本研究との関連では、マグニチュードホモトピー型は経路積分的な表示を持つことが明らかとなり、その表示を通してマグニチュード自体に対して何が言えるかは今後の課題である。 Ehrhart理論などの数え上げ関数から決まる無限級数は、ホロノミック級数の中でも特に単純なクラスを成すが、ほかにも周期グラフの増大度関数などに関する重要な進展があり、より広い視野に立ち研究を進める必要性が明らかになってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画していた二つの問題設定((i)どのような実数がホロノミック定数か? (ii)ホロノミック定数の間にはどのような関係式が成り立つか?)のうち、(i)については、マグニチュードの振る舞いの代数解析的メカニズムにアプローチするための理解の進展が得られたと考えている。しかし(i)についての進展がひと段落するのに年度末までかかったため、(ii)については実質的な進展はなかった。
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今後の研究の推進方策 |
マグニチュードのホロノミック定数の観点からの研究に関しては、このまま進めていきたいと考えている。特に、波動方程式に関するホイヘンス=フレネルの原理とマグニチュードの関係を示唆する観察が得られており、微分方程式論に関する知見を取り入れることが重要であると考えている。これは「現在までの進捗状況」で述べた二つの課題の両方に関係するものであり、幾何解析や解析学の専門家との協力を探りながら研究を進めたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究打ち合わせを目的に招聘計画だった研究者と別経費による会合の機会が得られたこと、また海外出張も、旅費の半分を別用務の別経費から支出したこと等により次年度使用が発生した。微分方程式論など、これまであまりカバーしていていなかった方面の知識が必要になることもあり、情報収集のための出張や招聘に使用する計画である。
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