本研究の目的は、細孔サイズを多彩かつ高精度に制御可能な金属有機構造体(MOF)を用いたプラズマ生成種の新たな選択的活用手法を創出することである。3つの観点、(a)篩としての特定種の取り出し、(b)特定種のMOF内での利用・反応、(c) 吸着による特定種の保存・輸送、への可能性を検証し、「MOFを用いたプラズマ生成種の新たな活用手法」を創出することを目的としている。 (a)については、プロパン含有プラズマ雰囲気において生成された水素分子の選択的抽出を、Zeolitic imidazolate framework (ZIF-8)膜を用いて実証した。プロパン分子に対する水素分子の抽出量は、膜の無い場合と比較し、最大10倍ほどに到達した。温度の抑えられたプラズマを用いたためでもあるが、プラズマ中でZIF-8に明瞭な損傷は見られないことを、X線回折法や、フーリエ変換赤外分光法、走査型電子顕微鏡などで確認をした。篩としての性能も、行った実験条件下では、1時間以上保持できることも確認している。 (b)、(c)に関しては、分子動力学法を用いた現象の理解に取り組み、例えば、窒素原子においては、反応性の高さ故、MOF内に停滞する傾向を見出した。プラズマ生成反応活性種を用いることによる、高密度貯蔵への可能性を見出すことができた。また、プラズマ生成種のその場検出を念頭に、プラズマによるMOFの表面状態変化が、アルコール分子の吸着特性に及ぼす影響に関する研究に取り組んだ。水晶振動子上にMOFを堆積させ、堆積されたMOF膜へのプラズマ処理の有無によって、エタノールの吸着特性が変化することを見出すことができた。プラズマとMOFを用いた、高密度貯蔵や、高感度分子検出への足掛かりとなる実験結果と考えている。 以上の様に、プラズマ―MOF相互作用に関する可能性について、十分な成果を得ることができた。
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