研究課題/領域番号 |
22K18710
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
野村 晋太郎 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (90271527)
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研究分担者 |
梅本 篤宏 筑波大学, 数理物質系, 特別研究員(PD) (30939070)
佐々木 進 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (80323955)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 暗黒物質 / WIMP / 量子計測 / ダイヤモンドNVセンタ |
研究実績の概要 |
1) ダイヤモンド結晶中に暗黒物質の有力候補である Weakly Interacting Massive Particle (WIMP)による格子欠陥の並びから飛跡を検出するための共焦点光学顕微MRIシステムの開発を行った。勾配磁場発生のためのマクスウェル・コイル・ペア、平行4線型コイルを設計、作製した。当初調達予定であった勾配磁場パルス電源の納期の予想外の大幅な長期化と調達価格の高騰により導入ができなかったため、プロトタイプとして最大3 Aの勾配磁場パルス電源を設計・製作し、特性を評価した。 2) ダイヤモンド NV センターを用いた飛跡検出に関して、量子科学技術研究開発機構高崎量子応用研究所にてAVFサイクロンのビームタイムを取得し、上期はE = 454 MeV のキセノンを、下期はE = 220 MeV の炭素をダイヤモンドに照射する試験をイオンビーム(TIARA)にて実施した。ダイヤモンド試料としてHPHTダイヤモンド(窒素濃度200 ppm以下、および10-20 ppm)とCVDダイヤモンド(窒素濃度1 ppm以下)を用意し、それぞれの核種で入射角方向3種類に対して行った。入射角を変えることで厚み方向の到達点を変え、飛跡の見え方の違いが評価できるようにした。これらの試料について、筑波大学で開発中の共焦点顕微鏡を用いて評価を行った。 3) 暗黒物質探索で、ダイヤモンドに入射した粒子情報を発光から推定するための、ダイヤモンドシンチレータの開発を行った。HPHTダイヤモンドに関して、窒素不純物量と発光量の関係性を明らかにした。発光波形を用いた電子とα線の識別に関する評価を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度、共焦点光学顕微MRIシステムの開発を開始したが、ピエゾステージを自動走査し、ダイヤモンド中に生成された窒素-空孔(NV)センターの発光像の取得がされた。マイクロ波パルス照射系を製作し、ダイヤモンド中NVセンターの光学検出磁気共鳴スペクトルの取得に成功した。MRI勾配コイルと勾配磁場パルス電源を製作し、特性を評価した。イオンビームを照射したダイヤモンド試料の発光像の解析から、窒素濃度1 ppm以下のCVDダイヤモンド飛跡観察に適しているとの予備的な結果を得た。ダイヤモンドシンチレータの開発に関して、HPHTダイヤモンド中窒素不純物量と発光量の関係性を明らかにした等の成果が得られ、論文投稿を準備中である。これらの成果により招待公演を含む4件の国内外の学会発表を行った。以上により、概ね順調に進展していると評価される。
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今後の研究の推進方策 |
イオンビームを照射したダイヤモンド試料の発光像の解析から、窒素濃度1 ppm以下のCVDダイヤモンド飛跡観察に適しているとの予備的な結果を得た。さらに、窒素濃度の低いHPHTダイヤモンドについても評価を進め、飛跡検出の実証を目指す。共焦点光学顕微MRIシステムの開発を引き続き推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
共焦点光学顕微MRIシステムのための勾配磁場パルス電源の調達がやむを得ない外部要因により遅れたため。次年度使用額が生じた。次年度以降に勾配磁場パルス電源の調達方法を見直し、研究を進めていく計画である。
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