研究課題/領域番号 |
22K18716
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉田 斉 大阪大学, 大学院理学研究科, 准教授 (60400230)
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研究分担者 |
岸本 康宏 東北大学, ニュートリノ科学研究センター, 教授 (30374911)
大塚 朋廣 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (50588019)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 半導体量子デバイス / 放射線応答 / 放射線検出器 / 半導体量子センサー |
研究実績の概要 |
本研究では、半導体量子ドット(半導体QD)の電離放射射線耐性及び、放射線検出器用のセンサーとしての利用の可能性を調査,研究する。 中性子源を用いた測定では、中性子源が弱いために放射化したGaAs量が少ないという本質的な問題に加え,基板上で放射化した元素(主に198Au)の寿命が長く(64.66時間)、変化が明瞭で無いという点も課題として判明した。そのため、十分なエネルギーの放射線を照射した場合と照射していない場合の状態を短時間で切り替え可能であるような装置系の構築を行う事とした。真空中でも使用できるα線ソース(241Am,エネルギーは5.4メガ電子ボルト)を、クライオスタット外部から移動可能となる様に改造した。この機構によって基板上の,ある限られた領域に対して,放射線を照射した状況と非照射の状況を切り替えることが可能となった。使用したアルファ線ソースは、直径2.4ミリの円形の領域がアクティブであり、基板上の限られた領域にアルファ線を集中的に照射することが可能である。この機構を用いて、量子ポイントコンタクト(QPC)にアルファ線を照射した状態での電流値の振る舞いを調べた。試料はHeガスによる熱交換によって冷却され、実験中の温度は4.6 Kであった。QPCのドレイン-ソース間電圧とドレイン-ゲート間電圧の双方をある値に設定する。アルファ線を照射した状況で、100秒間ドレイン電流を測定する。測定頻度約1 Sample/sである。アルファ線を照射しない状態で100秒間ドレイン電流を測定する。4回くり返して測定を行う。ドレイン-ソース間電圧およびドレイン-ゲート間電圧を複数の組合せで測定を行ったが、アルファ線の照射/非照射で明瞭な差違は見られなかった。しかし、ドレイン電流が安定しておらず、統計的に有意な変化があったかどうかを詳細に解析しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた研究は、計画通り実施できた。アルファ線ソースの有無による際は明瞭ではなかった。ドライブシャフトの回転に合わせて変化したと考えられる測定もあったため、結論を得ることはできていないが、今後の研究の展開に関して否定的なものではなく、今後も研究計画の実施で支障になることも生じていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後以下の2点の改良を考えている。第一に、照射/非照射を自動的に切り替え、長時間,系統的にデータを取るよう改良する。次に他の線種を用いてデータ取得を試みる。アルファ線は非常に吸収されやすい性質を持つため、基板上にヘリウム液体が薄く存在するとアルファ線が基板まで到達しない可能性がある。今回の測定では、ヘリウムガスの熱交換で冷却しており、ヘリウムのフィルムの影響を完全には排除しきれない。そこで、アルファ線よりも透過力が強い、ガンマ線の利用である。ガンマ線を利用する場合、エネルギーが高いと基板をも透過してしまうため、エネルギーの低いガンマ線が適している。このようなソースとして55Fe(1.7keV)を検討している。モンテカルロシミュレーションによって、どの程度のエネルギーがどの程度の頻度で、基板上にエネルギーを付与するかの計算を行う予定である. 今後さらに半導体量子デバイスに対する放射線の影響を調べるとともに、量子ドットを用いた実験への進展を検討している。
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