研究課題/領域番号 |
22K18723
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岡本 敦 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (40422092)
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研究分担者 |
佐藤 義倫 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (30374995)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | チムニー / 黒鉱 / 硫化物 / 熱電特性 / 明神礁カルデラ / 鉱物組織 / 海底熱水鉱床 / 岩石ー水相互作用 |
研究実績の概要 |
本年度は、アクティブな海底熱水鉱床と東日本の黒鉱試料を収集し、その微細組織構造と半導体特性について調べた。研究協力者に依頼して、小笠原海域の海底熱水系のチムニー試料、および、秋田県花岡鉱山の黒鉱試料をそれぞれ数十点、準備することができた。さらに、8月に新青丸の研究航海に乗船する機会を得て、小笠原海域の明神礁カルデラの推進1000mの海底での熱水活動を観察し、その熱水および、チムニーを採取することに成功した。 マイクロXRFスキャナを用いて、同心円状の黒鉱試料やチムニー試料についての元素マッピングをおこなった。その結果、チムニーでは大部分は閃亜鉛鉱がしめ、内側の壁には黄銅鉱ができていること、一番外側にはバライトに富むような系統的な変化があることがわかった。一方、長い年月が経って変化した黒鉱では、黄鉄鉱や黄銅鉱に富むような緻密な組織が観察された。 半導体特性については、熱電特性を測定する装置を試行錯誤しながら開発し、10センチ程度の同心円状の累帯構造を持つチムニーや黒鉱試料の熱起電力を測定することに成功した。その結果、黄鉄鉱や黄銅鉱は熱起電力が測定でき、電子をキャリアとするn型であることが明らかになった。また、Asなどがドープされると一部の黄鉄鉱はp型になる可能性が示唆された。緻密な黒鉱が測定が容易であるのに対して、チムニーの閃亜鉛鉱などに富む領域では空隙が多く、電気抵抗が大きいことがわかった。このことは、チムニー形成過程において、熱勾配および、半導体鉱物の分布が変化して、熱起電力が特定の時期に発生する可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
熱起電力の測定装置の開発は順調に進み、チムニー試料に対してきちんと計測できる体制が確立することができた。 アクティブな熱水系のチムニーと黒鉱試料で同心円状の組織を持つものを準備することができ、比較しながら研究が進められている。特に、当初の計画には入っていなかった実際の航海で熱水と共にチムニーの採取をすることができたこと、また、この試料が導電性の高い黄鉄鉱を壁に持つ、特徴的な試料だったこともあり、当初の予定よりも順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
詳細なミクロとマクロの両方のスケールでチムニーの鉱物組織の解析を行い、その累帯構造の発達過程を明らかにしていく。また、黒鉱の組織と比較しながら、海底熱水系のチムニーから黒鉱への変化の過程について検討する。 また、同時に熱電特性の分析を進め、鉱物組織と熱起電力の関係を明らかにする。特に、構成鉱物の種類、形状、連結性、空隙の影響とマクロな熱電特性を結びつける。 水熱実験により、チムニーの組織変化を模擬する反応実験を行い、それにより、熱電特性がどのように変化するかを明らかにする。 チムニー発達過程における、鉱物組織の時間変化、チムニーに生じる温度勾配、熱電特性の変化により、海底での発電機構について検討する。その上で、そのプロセスと、海底の生命系、環境への影響を議論する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実際の海底熱水系チムニーを小笠原での研究航海で採取することができた。このために、当初予定していた水熱実験よりも天然試料の分析、熱電測定を優先的に研究を進めた。このため、水熱実験やそれに伴う計測を次年度に行うため、その実験消耗品のために使用する
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