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2023 年度 実施状況報告書

夜の静寂に静かなマグマの足音を聴く

研究課題

研究課題/領域番号 22K18728
研究機関東京大学

研究代表者

市原 美恵  東京大学, 地震研究所, 准教授 (00376625)

研究分担者 行竹 洋平  東京大学, 地震研究所, 准教授 (20435853)
松本 聡  九州大学, 理学研究院, 教授 (40221593)
栗原 亮  神奈川県温泉地学研究所, 研究課, 技師 (50880837)
研究期間 (年度) 2022-06-30 – 2025-03-31
キーワード火山噴火予測 / 微動 / 背景地震ノイズ / 火山観測 / 火山
研究実績の概要

本研究が対象とする火山性微動は,夜間の静寂時に背景ノイズレベルとして検出できる微弱なものである.この微動をSeismic Background Level (SBL)微動と呼ぶ.

霧島火山では,2011年と2017-2018年に新燃岳においてマグマ噴火が発生し,それに先行する数か月から1年のあいだSBL微動の成長が見られている.特に,2018年噴火について,多項目観測データや論文として発表されているデータと比較した.その結果,2017年噴火に先行するSBLは,新燃岳の北西約5kmにある,霧島火山群の別の山体(硫黄山)のガス放出活動と連動していることが分かった.そして,2017年噴火直前から,顕著な連続微動として新燃岳直下の活動が始まり2018年噴火に至っている.2018年3月の噴火後に再び硫黄山の活動に移り,硫黄山の水蒸気噴火に至った.関連して,2008年~2019年の新燃岳と硫黄山の地震活動の再解析を行った.霧島火山の硫黄山から新燃岳西方にかけて地震の臨時観測点を引き続き運用し,データを収集した.

箱根火山では,SBLの長期間解析を行った.2014年1月から2023年8月までのデータを解析し,2015年の噴火後の約1年間と2022年から2023年にSBL微動が発生しており,いずれも自動検出されないような微小な地震が増加していた時期である.この微動は,地熱活動のある大涌谷近傍の観測点でのみ見られている.また,SBL解析を火山監視に実用化するため,気象庁と協力して草津白根火山および伊豆大島火山の長期解析を実施した.草津白根山では,他の観測から報告されている火山活動の盛衰と整合的なSBLの時間変化が確認された.一方,伊豆大島では全体としてSBLが高く,海洋島火山の監視にSBLを適用する際の問題点が明らかになった.これらの結果について,本プロジェクトの研究グループで議論を行った.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

4つの火山においてSBLの長期解析を実施することができ,SBLが火山活動の把握に有用であることが実証されつつある.霧島火山については,十分な観測データが蓄積されているが,今後解析を進める必要がある.連続振動を引き起こすメカニズムについても研究が進められた.

今後の研究の推進方策

霧島火山の臨時観測点データについてSBL解析を実施し,活動する二つの火山体(新燃岳,硫黄山)のSBL活動の推移を明らかにする.そして,SBL微動の発生モデルを提案する.箱根火山や草津白根火山については,他機関の観測データや臨時観測点のデータを合わせ,SBL微動の増減と火山活動の関係を明らかにする.伊豆大島火山については,海のノイズを分離する手法の検討を行い,今後,SBL解析を海洋島火山へ応用する道筋をつける.

次年度使用額が生じた理由

当初,霧島火山の臨時観測点の増強が計画されていた.しかし,すでに取得しているデータの長期解析を優先して進めている.伊豆大島火山の解析から,海洋島の火山のSBLは,海のノイズの影響で火山活動の影響がうまく見られないことが分かっている.そこで,所属機関の経費で招聘が決まっている外国人若手研究者に滞在を延長していただき,海洋ノイズ解析を進めることとした.その経費に使用する.また,箱根火山や霧島火山での効果的な臨時観測を引き続き検討し,実施する予定である.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] The sequence of the 2017-2018 eruptions and seismo-acoustic activity at Kirishima volcano group2023

    • 著者名/発表者名
      Ichihara, M., T. Kobayashi, F. Maeno, T. Ohminato, A. Watanabe, S. Nakada, T. Kaneko
    • 雑誌名

      Earth Planets Space

      巻: 75 ページ: 144

    • DOI

      10.1186/s40623-023-01883-8

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 大涌谷、駒ヶ岳、大涌谷地蔵尊、大又沢観測点で観測されるノイズ振幅の時間変化2023

    • 著者名/発表者名
      栗原亮
    • 雑誌名

      神奈川県温泉地学研究所報告

      巻: 55 ページ: 35-43

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Linking the flow-induced tremor model to the seismological observation: application to the deep harmonic tremor at Hakone volcano, Japan2023

    • 著者名/発表者名
      Ozaki, T., Y. Yukutake, and M. Ichihara
    • 雑誌名

      Earth Planets Space

      巻: 75 ページ: -

    • DOI

      10.1186/s40623-023-01865-w, 2023

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Reappraisal of volcanic seismicity at the Kirishima volcano using machine learning2023

    • 著者名/発表者名
      Yukutake, Y., A. Kim, and T. Ohminato
    • 雑誌名

      Earth Planets Space

      巻: 75 ページ: 183

    • DOI

      10.1186/s40623-023-01939-9

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 箱根火山の浅部および深部で発生する地震の活動2023

    • 著者名/発表者名
      栗原亮
    • 学会等名
      日本火山学会2023年秋季大会

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公開日: 2024-12-25  

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