研究実績の概要 |
本研究は「定常状態の変形組織に達した多相系天然岩石から変形時の情報を読み取るために新しい差応力計を開発する」ことを目的に研究を進める。 昨年度は世界で唯一マントルかんらん岩の大変形を伴うねじり実験が可能な、米国ミネソタ大学Kohlstedt研究室所有のパターソン型ガス圧式変形試験機で変形実験を行った。かんらん石と輝石の量比の異なるかんらん岩(輝石の体積分率=1, 15, 25, 35%)の試料を用いて、歪み100%以上の定常状態に達した変形組織と変形実験時に得られる応力、ひずみ、時間の関係を示す力学データを得ることに成功した。 本年度は、この変形実験試料について詳細な岩石組織解析を行うために、静岡大学機器分析センター所有のフィールドエミッション型電子顕微鏡と電子線後方散乱回折(EBSD)システム(FE-SEM, JXA-iHP200F; EBSD, Oxford-symmetry)を用いた分析方法の検討を行った。具体的にはサブミクロンスケール(~0.1ミクロンのステップサイズ)の微小領域における多結晶体試料の結晶方位を測定するために、(1)EBSDフォルダーの設計と改良、(2)分析時のキャリブレーション法の検討、(3)組織解析のためのマトラボ・プログラムの改良を行った。これらの検討により、微小領域の高解像度結晶方位マップを用いたかんらん石多結晶体における粒子スケールの転位の密度分布の解析が可能となった。
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