研究課題/領域番号 |
22K18744
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
臼井 洋一 金沢大学, 地球社会基盤学系, 准教授 (20609862)
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研究分担者 |
加藤 真悟 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 上級研究員 (40554548)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | 磁気ヒステリシス / 強磁性共鳴 / チャート |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、強磁性共鳴の異方性の測定・解析方法を新たに確立し、岩石中の化石マグネトソームの定向配列を検出することである。2022年度は磁性細菌の培養と強磁性共鳴測定、岩石の強磁性共鳴測定を進めた。まず磁性細菌について、金沢大学生命理工学類にてAMB-1の培養を行った。この試料を用い、残留磁化測定と強磁性共鳴測定を行った。ゲランガム固化時の地球磁場による残留磁化は、十分に測定可能であり、磁性細菌の配向を推定できる。乾燥後の試料の強磁性共鳴からも、既往研究と調和的な結果が得られた。一方、ゲランガムによるマイクロ波吸収が大きいため、配列を持った磁性細菌の強磁性共鳴測定はそのままでは困難であることが分かった。岩石については、陸上および海底のチャート試料の残留磁化測定と強磁性測定を行った。チャート試料からは、静磁的相互作用のない単磁区粒子を示すシグナルが顕著に検出された。海底試料は強磁性共鳴においても磁性細菌と類似のスペクトルを示し、化石マグネトソームが主要な強磁性鉱物であることが示唆された。一方、陸上のチャート試料の強磁性共鳴は複雑なスペクトル形状を示し、そのままでは磁性細菌由来の磁鉄鉱の存在は検証できないことが分かった。試料間のスペクトル形状の違いを統計的に処理すると保磁力60 mT程度の磁鉄鉱の存在が示唆され、これは等温残留磁化獲得曲線から見積もられる磁鉄鉱の保磁力と近い。以上の結果の一部を国内学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の達成目標は以下の三つである:(1)磁場中で培養した磁性細菌を用い、強磁性共鳴スペクトルと定向配列との定量的関係を明らかにする。また最適な測定条件を求める。(2)化石マグネトソームを含む堆積物について強磁性共鳴から定向配列を求める。(3)岩石中の化石マグネトソームを探索し、発見する。2022年度は(1)を進める計画であった。しかし、培養した磁性細菌を寒天等と共に強磁性共鳴に導入した場合に水によるマイクロ波減衰が大きく、十分なシグナルが取れないことが分かった。乾燥試料により異方性のないスペクトルの測定は行ったが、まだ異方性の測定に着手していない。強磁性共鳴測定では、水を含まない岩石を優先的に測定した。繰り返し測定により、装置の発生磁場が若干ドリフトすることを発見した。そのためマーカーによる校正が必要である。また、購入予定であったパルス磁化器について部品不足により調達が遅れた。このように予期せぬ障害があったが、いずれも解決策はあるため、自己評価として(3)とした。
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今後の研究の推進方策 |
強磁性共鳴測定における水の影響を軽減するため、培養試料と堆積物水の樹脂成型を行う。残留磁化および帯磁率異方性を用い、磁性鉱物の定向配列を検出する。さらに、自作のホルダーを用いて強磁性共鳴異方性の測定を行い、理論計算と比較することで定向配列の検出精度を明らかにする。岩石試料についても強磁性共鳴異方性の検出を行い、2022年度に測定済みの磁気ヒステリシス特性と比較し、化石マグネトソームの有無とその生成タイミングを制約する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していたパルス磁化器について、メーカーにおける部品調達の遅れにより納品の遅れが生じたため。
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