研究課題
R5年度の研究実績は、以下のように纏めることができる。超高圧透過型電子顕微鏡内における引張圧縮繰り返し負荷実験を実施し、サブミクロンサイズの単結晶金属では、低変位振幅時には微細な高転位密度領域が現れるものの、高変位振幅時にはそれらが完全に消失する様子を動的観察によって明らかにした。これは、微細な材料中における表面からの力学的作用が材料全体に影響したことが原因と考えられる。その後、試験片のすべり変形は局在化し、この塑性ひずみは主にらせん転位によって受け持たれることを特定した。前年度実施したマイクロサイズの試験片では、内部に転位壁が存在し、その両側をらせん転位が移動していたが、サブミクロンサイズまで小さくなった試験片では、転位壁は形成されなかった。一方、らせん転位の通り抜けによって材料表面には突き出し/入り込みが形成され、入り込み底部の応力集中に起因した疲労破壊を生じた。このため、試験片表面上での突き出し/入り込みの形成を抑制する構造を考案し、引張圧縮繰り返し負荷試験を実施した。試験片には微細なすべりのみが起こり、塑性ひずみの局在化による巨大な損傷は生じなかった。試験後の試験片を薄片化し、内部の透過観察を行った結果、内部には全体に渡ってらせん転位のみが存在することを明らかにした。試験片内でらせん転位はその一端は固定され、他端は表面に到達した状態になっており、固定端を中心に可逆的に試験片内を移動した可能性があることがわかった。
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