研究課題/領域番号 |
22K18756
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
平山 朋子 京都大学, 工学研究科, 教授 (00340505)
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研究分担者 |
山下 直輝 京都大学, 工学研究科, 特定助教 (50847746)
土屋 智由 京都大学, 工学研究科, 教授 (60378792)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | トライボロジー / ナノすきま / 潤滑油 |
研究実績の概要 |
本研究では、潤滑油で湿潤された二固体間を対象場とし、ナノすきまを形成する二面をせん断(=摩擦)するのに必要なせん断応力(=摩擦力)の実計測を目指す。具体的には、「境界潤滑」および「流体潤滑」のそれぞれの状態を模擬した2種類のMEMS計測デバイスを創成し、可能な限り物理の素過程を模す形態で摩擦力の計測を試みた。 「境界潤滑」状態におけるナノすきまでのせん断応力計測には「ナノすきまずりデバイス」を用いた。具体的には、MEMS創成技術を用いて静電チャックデバイスを新たに開発することにより、静電気力で密着させた二面の純せん断応力を計測した。片方の面を柔らかいフィルム状の材質で作製すればその面は静電気力によってもう片方の面に倣うことができるため、nmオーダで均質なすきまを有する二面を得ることができる。それにより、潤滑油分子の構造の違いに伴う摩擦挙動の差異を明確に捉えることに成功した。 また「流体潤滑」状態におけるナノすきまでの流量特性計測には「ナノ流路デバイス」を用いた。MEMS創成技術を用いて深さが500nm程度の流路を作製し、そこに高分子系添加剤を含む潤滑油を流したところ、添加剤が表面に吸着して徐々に流路を塞ぐことが分かった。しかしながら、最後に添加剤を混入していない基油のみを流したところ、一定量の吸着層が剥がされ、流量も一定値に落ち着くことを確認した。 以上の2種類の実験により、境界潤滑および流体潤滑状態にあるナノすきまでの潤滑油挙動を把握することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2種類のデバイス創成を終えるのみならず、どちらもめぼしい成果を得ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
境界潤滑状態の評価においては、「ナノすきまずりデバイス」を用いて、各種潤滑油をすきま内に挟んだ時の摩擦挙動を調査する。また静電容量システムを付加することで、油膜厚さの定量化を目指す。流体潤滑状態の評価においては、「ナノ流路デバイス」に流す潤滑油種を変えた時の挙動を調べることにより、より一般化した潤滑油挙動の把握を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
複数の消耗品で納期が半年以上と長くなっており、今年度の購入に間に合わないと判断したため。
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