金属の塑性変形時に材料に超音波振動を付与することによって変形抵抗が低減する現象は,「Blaha効果」として広く知られ,金属加工への積極的な展開が進められている.その一方で,同効果のメカニズムや発現条件には依然として不明な点が多く,変形抵抗の低減に直接的に影響を及ぼす因子や条件の解明や,加工において振動の効果を効率的に獲得するための知見の獲得が強く求められている.そこで本研究では,「超音波振動下における材料の塑性流動現象のin-situ観察」による評価手法を確立することで,“超音波振動がもたらす金属材料の塑性変形挙動の変化”そのものに対して深い理解をもたらすとともに,それらに基づいた新たな金属加工技術を構築することを目的として研究を実施した.その結果,以下のような知見を得た. ・くさび状圧子(インデンタ)による押し込み試験を活用した装置を開発し,PIVを援用した解析手法を確立することで,超音波振動付与下における材料の変形挙動を定量的に評価する手法を確立した. ・圧縮場,せん断場のそれぞれに対して超音波振動を付与して変形抵抗を評価した結果,ひずみの小さい領域では音響軟化が優位となり変形抵抗が低減する一方で,ひずみの大きい領域では音響効果が優位となり変形抵抗が増大することを明らかにした. ・構築した試験装置によるその場観察の結果,超音波振動の付与による塑性変形場の拡大,潤滑剤の作用領域の拡大などが明確化されるとともに,超音波振動が材料の塑性変形挙動に及ぼす影響について定量的な議論が可能となることが示された.
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