研究課題/領域番号 |
22K18761
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
細井 厚志 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (60424800)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | 損傷治癒 / 疲労 |
研究実績の概要 |
機械や構造物には寿命が存在する.金属材料の疲労破壊を遅延させる技術としては,ショットピーニングや高周波焼き入れ等の手法が挙げられる.これらの手法では疲労寿命を改善することが可能であるが,き裂や転位等の損傷自体を修復することはできない.根本的に疲労損傷部分を修復することでインフラの長寿命化,安全性の向上を低コストで行う技術が求められており,き裂治癒技術は脱炭素社会や持続可能な社会の実現につながることが期待される.これまでの研究により,電流印加により疲労き裂の発生が遅延することや疲労寿命が延長されることが明らかになっている.しかし,電流印加による金属の損傷回復,疲労き裂発生の遅延に関するメカニズムは解明されていない.特に,疲労き裂発生の初期段階における固執すべり帯(Persistent Slip Band: PSB)に対する電流印加の影響を調査している論文は少なく,さらなる調査が求められている.そこで本研究では,パルス電流印加がPSBによって形成される突き出しと,PSB内の空孔濃度に与える影響を実験及び解析的に評価した.実験では試験片にパルス電流を印加した場合しなかった場合のPSBの突き出し成長速度を比較し,パルス電流印加前後での材料表面近傍の抵抗値を比較した.パルス電流印加を行うと,突き出し成長が遅くなり,抵抗値も減少した.このことは.パルス電流印加により,PSB内の空孔を含む点欠陥の濃度が低下したことが考えられる.PSBの空孔濃度の減少は,空孔濃度が再び定常状態に達するまで,突き出し成長を抑制すると結論付けた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね研究計画通り研究が遂行できているため。
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今後の研究の推進方策 |
1年度目はき裂発生の因子となるPSBに着目して,損傷治癒技術の構築とそのメカニズム解明について研究を行った.2年度目はさらに本技術を発展させ,内部に進展したき裂に対する治癒技術の構築と治癒メカニズムを実験及び解析的に推進する.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を遂行する過程で,当初購入を予定していた電源装置ではなく,効率的に電流印加できる電源装置ヘッドやそれに付随する物品に変更することでより良い成果が得られることが判明した.その結果,当初の予定より安価に購入することができたため.
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