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2023 年度 実施状況報告書

火炎化学論的トンネル効果の活用による新概念着火法の創出

研究課題

研究課題/領域番号 22K18765
研究機関東北大学

研究代表者

丸田 薫  東北大学, 流体科学研究所, 教授 (50260451)

研究分担者 中村 寿  東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (40444020)
森井 雄飛  東北大学, 流体科学研究所, 助教 (50707198)
研究期間 (年度) 2022-06-30 – 2025-03-31
キーワード低温酸化反応 / 着火手法 / エンジン
研究実績の概要

一般的な着火法は,燃料の持つ大きな総括活性化エネルギー障壁を超えることを目的としており,それが着火成功に必要不可欠と考えられている.しかしここでは多種の炭化水素燃料の混合物である実用燃料中の特定燃料群が,活性化エネルギーの小さい低温酸化反応とよばれる化学反応を呈すること,低温酸化反応は燃料希薄時に強化されること等に着目する.本研究は低温酸化反応のみを選択的に励起する,燃料希薄燃焼の格段の高効率化に資する,新原理の着火法の創出を目指している.具体的には,総括活性化エネルギーの小さい「低温酸化反応群のみ」を選択的に誘起する新原理の着火法創出を目指す.
一般的着火では燃料の持つ大きな総括活性化エネルギー障壁を超えることが必要条件と考えられている.燃料分子中,最初に反応する化学結合を切断,十分な速度で連鎖分岐反応群全体を進行するため,電気火花(アーク,即ち熱平衡プラズマ)や火炎トーチ等が現在も用いられる.これまでに780K着火源によるDMEの冷炎誘起を確認していること,近年,世界的な火炎化学研究進展により示された,冷炎の化学反応を熱炎の化学反応経路に合流させうることに基づき,新たに製作する低温の着火源により着火実験を行うとともに,数値計算によるメカニズム検討を行う.またこれに加え,近年徐々に定見が確立しつつある着火核成長理論に基づき,一度に大きなエネルギーを供給する従来型の着火法ばかりではなく,小エネルギーを繰り返し供給することで,理論的にも理にかなった着火促進がなされる可能性が明らかになってきた.これについても実験・数値計算の両面から検討を実施する.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

総括活性化エネルギーの小さい低温酸化反応群のみを選択的に誘起する,従来にない新原理の着火法の創出を目指す.従来は電気火花(非常に高温の熱平衡プラズマ)やトーチを使用することが一般的であったが,ここでは低温酸化反応のみを誘起しうる,より低温・低エネルギーの着火源を用意し実験を行う.詳細化学反応機構を含む数値計算を援用し,2種の実験装置を用いる.一方は内容積16ccの観察窓付矩形定容器(ステンレス製,14×14×80mm)を用いた着火実験で,423Kまでの予熱機能を持たせ,静止混合気,初期温度・圧力上昇条件を担う.他方は既設の乱流発生ファン付円筒定容器(容量25㍑)を用いた乱流着火実験装置であり,初期温度・圧力は常温,常圧とする.現在までに,正ヘプタン空気混合気において700K以下程度の熱源による火炎伝播の開始確認に成功していおり,数値計算による現象分析をすすめた.また予定していなかった,従来型の火花点火を非常に小さいエネルギーで複数回実施することによって,大きな着火エネルギーでは着火不能であった混合気に着火可能であることを見いだし,これについて調査を実施した.その結果,達成された着火現象は,消炎に至る前の着火核を小エネルギーで繰り返し後押しする方法で,着火を達成できることが明らかとなり,メカニズムとともに国際会議での発表に繋がっている.

今後の研究の推進方策

低エネルギーでの繰り返し火花点火による着火現象の実験および数値計算をすすめるとともに,低温着火源により励起される,冷炎と熱炎の振る舞いに関する研究を継続する.現在までの数値計算により,着火のためのエネルギー投入の時間・空間履歴が着火特性を大きく左右することが明らかになったため,エネルギー投入の時・空間履歴を制御しながら着火を行う実験をすすめ,より詳細な着火特性解明を図る.数値計算では着火源の低エネルギー化,繰り返しの影響,化学反応時間との競合を考慮した解析を実施する.また次第に明らかとなった0次元着火と1次元火炎の可変換性に基づく,着火過程の分析を行い,現象理解を図る.

次年度使用額が生じた理由

本研究は2種の実験装置を用いる計画となっている.一方は内容積16ccの観察窓付矩形定容器(ステンレス製,14×14×80mm)であり,423Kまでの予熱機能があり,静止混合気,初期温度・圧力上昇条件を対象とする.他方は既設の乱流発生ファン付円筒定容器(容量25㍑)を用いる乱流着火実験装置であり,初期温度・圧力は常温,常圧を対象とする.令和5年度は,観察窓付矩形定容器における実験再現性の達成,また既設の乱流発生ファン付円筒定容器(容量25㍑)を用いた着火実験を行い,1)混合気生成・着火手法の精査,2)繰り返し着火実験の条件拡大を図った.また併せて着火~伝播遷移過程に関する詳細化学反応計算を実施した.特に1)の実験再現性の精査については,着火波形異常があったこと,混合気生成法が条件に敏感で,再現性確保にほぼ2年を要したため,全体として大きく計画が遅延した.しかし現在では1)の安定した着火実験の再現性確保を達成し,2)については学会発表を達成,さらに3)の数値計算も順調に進んでいるため,2024年度は目標である着火~伝播遷移現象を予測することが可能になると考えられる.1)~3)について,国内外での成果発表を行う.

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] Effects of Repetitive Spark Discharges with Milliseconds Intervals on the Ignition-to-Flame Propagation Transition for Lean n-Heptane/Air and iso-Octane/Air Mixtures2023

    • 著者名/発表者名
      Takashi Kakizawa
    • 学会等名
      29th International Colloquium on the Dynamics of Explosions and Reactive Systems (ICDERS 2023)
    • 国際学会
  • [学会発表] ガソリンサロゲート燃料組成が着火・火炎伝播遷移過程に与える影響2023

    • 著者名/発表者名
      柿澤 昂志
    • 学会等名
      第61回燃焼シンポジウム

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公開日: 2024-12-25  

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