初年度に引き続き空隙率とフラクタル部の位置が異なる合計6種類のフラクタル翼(フラクタル部なし、前縁部に空隙率0.3および0.6のフラクタル部、後縁部に空隙率0.3および0.6のフラクタル部)の空力計測と流れ場の可視化を行った。実験には名古屋大学所有のゲッチンゲン風洞を用いた。空力計測には六分力天秤を用い、流れ場の可視化にはスモークワイヤ法(本研究で作成)と可視化光源としてレーザを用いた。翼が非定常運動をする場合の実験を行った。ステッピングモータを用いて六分力天秤にとりつけられた翼を天秤と一緒に運動させ計測を行った。その結果、フラクタル翼は非定常運動時の動的失速を抑制できることがわかった。この傾向は同じ空隙率を有するスリット翼でも見られたものの、フラクタル翼の方が大きな揚力係数を示した。さらに、高迎角時にみられた揚力係数の振動がフラクタル翼の場合には低減できることがわかった。結果を国際誌(CEAS Aeronautical Journal)に投稿し、現在査読中である。さらに、低レイノルズ数二枚翼についても同様の実験を行った。 非定常空力特性実験を可能とするため、二重反転ファンを64個用いたマルチファン送風装置を作成した。約0.8m×0.8mの範囲で8×8個のファンを配置した。今後、入力信号(デューティー比)を時間的に変化させる、あるいは可変のルーバーを設置することにより、非定常風の中に置かれたフラクタル翼の空力計測が可能となる。この実験に関しては今後の展開としたい。 ラージエディシミュレーションによるスリットを有する二次元翼の非定常空力解析を行った。スリットによる空力特性の変化を評価し、フラクタル翼との優劣を調べる。大規模な計算が必要でありスーパーコンピュータを用いて現在解析を行っている。計算が終了次第結果をまとめて国際誌に投稿予定である。
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