研究課題
従来の流体工学の知見では,個々の液滴は1回しか分裂しない.近年,高温の金属液滴の内部で凝縮相反応に駆動されて発泡し,液滴が連鎖的に分裂を繰り返す現象が発見された.しかし現状,なぜ連鎖分裂が発生するのか,という根本的な疑問が未解明であった.そこで本研究では,二色温度法による温度計測と,発生ガス種のその場分析を同期した複合分析法を用いて,金属液滴の連鎖分裂機構を探究した.具体的に以下の2点を目的に掲げて実験と理論解析からアプローチした.(1)高温の金属液滴の瞬時温度と発生ガス種を同時に計測可能な複合分析法を新規に開発・適用すること.(2)飛行する金属液滴が,連鎖分裂を起こす瞬間の温度と発生ガス種を特定することで,連鎖分裂を駆動するガス発生機構を明らかにし,連鎖分裂の機序にアプローチすること.本研究では,安全かつ安定的に金属液滴を得る工夫として,試料金属をグラインダーで研磨した液滴が,自己加熱して融解し,連鎖分裂を生じることを利用した.実験は,研究代表者所属の九州大学伊都キャンパスで実施した.まず,輝度比と温度の関係を校正したカラー高速度カメラを用いて金属液滴を撮影した.その結果,融点以上かつ沸点以下の温度で飛行しながら連鎖分裂に至ることが明らかになった.温度計測領域で吸引したガスをマルチターン分析経路で分離することで,金属液滴破裂時の発生ガス種をその場分析した.ガス発生は検知されたものの,液滴破裂を駆動する微小なガス種を分離することが困難であり,今後の課題が明確になった.液滴内部における物質拡散のLIF実験結果および,液滴内部の凝縮相反応を総合的に検討することで,液滴内部の物質拡散が律速過程であり,特に,雰囲気酸素の浸透によって,炭素鋼の場合は一酸化炭素の発生が,チタンの場合は窒素の発生が,液滴破裂を駆動するガス種であると推定された.
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