研究実績の概要 |
数分子層程度の真空ナノギャップを挟む二つの固体が分子間相互作用力のみでフォノン熱輸送を実現し,準カシミヤ熱輸送機構による熱共振現象を発見した(Chen & Nagayama, Int. J. Heat Mass Transf., 2021).新たに発見したフォノン熱輸送機構には,真空ナノギャップを挟む固体表面に準カシミヤカプリングによるフォノン輸送が誘発される.本研究では,ナノギャップにおける準カシミヤカップリング誘発したフォノン熱輸送機構に基づいて,分子動力学解析および実験の両面より極小局所領域における革新的ナノスケール熱制御技術の原理原則を明示することを目指す. 今年度は,独自の計算コードと分子動力学計算パッケージプログラムLAMMPSを用いて計算を実行した.まず,水分子を吸着したPtのナノギャップにおいて,界面固体分子間のみならず液体分子間における熱共振現象およびフォノン輸送を確認できた.非平衡状態において、ナノギャップを介して二つの固液界面間に通過する熱流束はギャップ距離の減少に伴い指数関数的に増加し,二つの液体吸着層の原子間に生じた熱共振が固体界面層の原子間の熱共振を共起させることを波形解析より解明した.次に,SiCのナノギャップにおける熱共振現象およびフォノン輸送が,界面におけるSiCの分子終端原子の配置(Si-C, C-Si, Si-Si, C-C)による影響を明らかにした.異種終端原子が熱共振現象およびフォノン輸送を抑制し,同種終端原子が熱共振現象およびフォノン輸送を促進できることを発見した. これらの結果を2022年度熱工学コンファレンスにて発表し,Royal Society of Chemistry社のPhysical Chemistry Chemical Physics誌およびNanoscale誌に掲載することになった.
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