今年度の取組内容としては、全無機鉛ハライドペロブスカイトを用いた室温ポラリトン凝縮の偏光状態と、その量子性の調査に特に注力した。前年度までには、本来は相互作用を起こさない直交した2つの偏光モードが、わずかに光学的異方性を持つことにより、偏光ミキシングが可能であることを明らかにいていたが、今年度はさらに解析と考察を推し進め、一連の成果をCommunications Materials誌掲載という成果に取りまとめた。現在も引き続き調査を続けており、ポワンカレ球上の全偏光状態を利用可能な量子ビットへの応用可能性を検討している。また、室温ポラリトン凝縮相のニューロモルフィックデバイス応用を目指した重要な技術として、共振器面内にポテンシャル構造を組み込んだ集積型ポラリトンデバイスの新作製手法を提案した。有機色素を活性媒体として光硬化性樹脂に組み込むことで、光ナノインプリント技術をベースとした新たな共振器デバイス作製技術:Nanoimprint-bondingプロセスを開発し、フォトニック構造を集積した高Q値の室温ポラリトンデバイスを実現した。現在、この技術を全無機鉛ハライドペロブスカイトを活性媒体として置き換えるべく、さらなる展開を進めている。
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