研究実績の概要 |
電気伝導を基本とする新方式の塩水中の無線通信,海水管での通信を実証した.直径2.5cmチューブにおいて純水,塩濃度0.3%,3%(海水と同濃度),25%の溶液における距離数mでのFET検出系の1 MHzのスイッチング特性では,純水の場合,信号の減衰が著しく,1m以上で出力電圧の振幅Vpeakが観測できなかった.NaCl濃度3.5%と25%においては,入力電圧VGに対し出力電圧VRLは周波数応答し,NaCl溶液の濃度が高いほど振幅Vpeakが10mでも増加した.電磁波であれば,NaCl濃度の上昇,つまり,イオン濃度の上昇で吸収され,高濃度イオンではより減衰するはずだが,本実験では逆の傾向を示した.NaCl濃度による伝播の上昇は電磁波ではなく,電気伝導機構である.この電気伝導をもたらすのは,イオンプラズマ振動が最も妥当と考えられる.距離20mの平面波水槽(1mx1mx20m)にてインダクタンスLの10mHから1uHまでの減少で 、最大伝達ピーク周波数が140KHzから8MHzまで上昇した,これは水槽が共振回路となることを示している。20m以上の通信では共振回路は必須であるが,距離50 mの海水プール0.9mx20mx50m)においても2.0MHzにてピークをもち,1 Mbps以上のデータ伝送を行えた.本伝送方式は電気伝導を基礎とするので,導電性のある液体であれば,透明性は必要としない.複雑形状の管やパイプ等でも可能である.ただし,塩水が海(アース)と接していない環境が必要であることがわかった.海は巨大なアース電位となり,信号が伝搬せずに短絡される.淡水化プラントでは塩濃度が海水濃度の2倍以上の廃液がでる.また,醤油の塩濃度は10%以上である.高塩濃度の液体が存在するプラントの容器やパイプ内壁検査に利用する小型検査用海水ドローンへの応用などが考えられる.
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