研究課題/領域番号 |
22K18797
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
安藤 妙子 立命館大学, 理工学部, 教授 (70335074)
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研究分担者 |
澤野 憲太郎 東京都市大学, 理工学部, 教授 (90409376)
小林 大造 立命館大学, 理工学部, 教授 (20557433)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | イメージセンサ / 光電変換 / シリコン / ゲルマニウム / ピラミッド構造 |
研究実績の概要 |
超高速イメージセンサの実現に向けて,シリコン内に傾斜壁を有する埋め込み型のゲルマニウムフォトダイオード(PD)を製作する.このゲルマニウムPDをシリコンに設けた逆ピラミッド構造と組み合わせる.逆ピラミッド構造の側壁には信号電荷をシリコン基板から絶縁するための酸化膜を有し,底面は酸化膜が除去されている. 初年度はシリコンウェハ上に深さが2 umでゲルマニウムとシリコンの間に酸化膜を持たないピラミッド型のデバイスを作製した.この目的は,シリコンの3次元構造,すなわち異なる結晶方位で構成される表面上に,ゲルマニウムのエピタキシャル成長が可能かどうかを確認することである. 実際に酸化膜を形成したシリコンウエハにリソグラフィを行い,酸化膜をパターニングした後に,結晶異方性ウェットエッチングにより単結晶シリコンの結晶構造を利用した逆ピラミッド構造を製作した.成長開始部分の面積差による違いを確認するため,1チップ内において底面幅が0.5 um,1 um,3 um,5 umの4種類の逆ピラミッドができるようデバイスを作製した.チップ表面にはエッチング加工の際のマスクとして利用した酸化膜が残っており,逆ピラミッド構造の傾斜側面({111}面)と底面({100}面)がシリコン表面となっている. この逆ピラミッド構造が形成されたチップにゲルマニウムのエピタキシャル成長を実施した.4種類の全ての底面幅の構造において,逆ピラミッドのシリコン面よりゲルマニウム成長して埋め始めていることを観察し,エピタキシャル加工を用いることによりゲルマニウムを用いたピラミッド型電荷収集構造が作製可能であることが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度はシリコン基板上に結晶異方性ウェットエッチングを用いて逆ピラミッド構造を作製し,空間となった逆ピラミッド内をゲルマニウムのエピタキシャル成長で充填するプロセスが可能かどうかの確認を行った. シリコンウェハ上に深さが2 umのピラミッド型のデバイスを作製した.成長開始部分となる逆ピラミッド底面の面積差によるゲルマニウム成長違いを確認するため,同一チップ内において底面幅が0.5 um,1 um,3 um,5 umと4種類の構造となるように設定した. 製作においてはシリコンウェハ上に厚さ 0.1 um の酸化膜を形成し,EBリソグラフィを行い,酸化膜をエッチングしてエッチングマスクパターンを作製し,ウェットエッチングで逆ピラミッド構造を製作した.作製したデバイスの酸化膜パターニングではアンダーエッチングにより設計値よりも大きいサイズになったがチップ内のばらつきは小さかった.その後のウェットエッチングにおいて底面幅の大きさごとにエッチング深さが異なる結果となった.ただし本来は寸法サイズを統一するため大きな問題ではない. 次に後ゲルマニウムのエピタキシャル成長を行うことで初年度で目標としたデバイスが完成した.ただし今回は深さ 2 um のピラミッドを充填するのではなく,3次元構造上に成長を開始できるかどうかの確認を行った.4種類の底面幅の全ての構造においてゲルマニウムがピラミッドを埋め始めているのが観察でき,エピタキシャル加工を用いることによりゲルマニウムを用いたピラミッド型電荷収集構造が作製可能であることが確認できた.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究としては実用に向けた構造製作をさらに推し進める.具体的には(1)逆ピラミッド構造の側壁に信号電荷を通過させないための酸化膜を形成し,底面のみとなった3次元構造からゲルマニウムのエピタキシャル成長が可能かどうかを確認すること,(2) さらに逆ピラミッド構造の側壁にボロン沿うドーピングを行うプロセスを開発することが必要となる.また,今後は透過電子顕微鏡を利用した観察により,ゲルマニウムの結晶性,界面の欠陥生成などの評価を行う. 一方でピラミッド構造を持つフォトダイオードもまた新規構造であり,このようなピラミッド型フォトダイオードの光電変換効率,暗電流等の光および電気特性の評価が必要である.評価方法を確立するために,まずはこれまで実績のあるエピタキシャルシリコン埋め込み型のピラミッド構造をフォトダイオード製作へと応用し,そのダイオードを利用して評価方法を確立する.
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次年度使用額が生じた理由 |
ゲルマニウムのエピタキシャル成長については初年度で3回ほど行い,様々な観点から成長の確認を行う予定であった.しかしながら1チップ上に数種類の構造を作り込めたこと,シリコン構造の設計製作に若干時間を要し,最終的に初年度の試作1回のみとなったことから,その原料となる材料費等での予算執行が限られた. 次年度では改めてエピタキシャル成長の条件を詳細に確認するために複数回にわたって実験を行う.また電子顕微鏡観察を行うため,それらに利用する物品費として充当する.
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