研究課題/領域番号 |
22K18799
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
森田 行則 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究グループ長 (60358190)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | SOI / シリコン・オン・インシュレーター / ヘリウムイオン顕微鏡 / HIM / ナノポア / 量子閉じ込め / エッチング |
研究実績の概要 |
令和4年度の概要は下記である。 酸素エッチングによって極薄シリコン層を形成するための基板・エッチング条件の確認を行った。基板としては、スマートカット法により作成したシリコン・オン・インシュレーター(SOI)基板(市販品)を用いた。今回、従来用いていた(100)方位ではなく、(110)方位のSOI基板を用いてエッチング条件の確認を行った。これは、面方位を変えることによりエッチング速度が変化するか、また(100)を用いた場合よりも、より薄膜のシリコン層が形成できるかを確認するものである。(100)の場合と同様の温度、酸素分圧条件でSOI層をエッチングし、その膜厚を計測した結果、シリコン層のエッチング速度は(100)方位の場合と同様で、面方位によらず酸素分圧のみに依存することが明らかとなった。エッチング速度は、温度900℃、酸素分圧1×10-5torrの条件でおよそ4nm/minであった。酸素エッチングの速度が酸素の供給律速によって決まっていることを確認する結果であった。 ヘリウムイオン照射による試料加工は、グラフェンなどの極めて薄い試料に対して実施されてきたことから、Siに対する加工にあたってもSOIをサブ1nmまで薄膜化して実施する予定であったが、これに先立ち、膜厚3nm程度のシリコン層を形成して、それに対してヘリウムイオン照射により加工が可能であるかの予備実験を行った。シリコン層は酸素エッチングにより薄膜化し、下層のSiO2層を除去することなく照射実験を行った。ドーズ量を変調してヘリウムイオン照射を行ったところ、照射後のヘリウムイオン顕微鏡観察において、ドーズ量の変化に従い照射スポットエリアの輝度が変化するのが確認された。さらにドーズを増加させると、窪みのような形状が形成されることが分かった。すなわちヘリウムイオンのドーズ量を調整することで、シリコンに対しても数十nmピッチでの規則的な変調構造が形成できる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サブナノメートルの厚さの極薄シリコン層の形成条件の確認が未達であるが、約3nm厚さのシリコン層を用いてヘリウムイオン照射の予備実験を開始したところ、この厚さの膜でもナノポア加工が可能であることを示唆するデータが得られた。そこで、実際にシリコン層に対し照射条件を調整してヘリウムイオン照射を行い、数十nmピッチでの規則的なナノポアアレイを形成した。今後、電気的特性、光学的特性変調の確認を進める。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度には下記を進める予定である。 研究目標に掲げたサブ1nmよりも厚めの、数nm厚さのシリコン層を用いても、ヘリウムイオン照射によるナノポア形成が可能であることを示唆するデータが得られたことから、この数nm厚さのシリコン層を用いて、ナノポアの間隔等のパラメータを調整して加工したナノポアアレイによる光学特性変調の確認を進める。フォトルミネッセンスによる計測を用いて、ナノポアのサイズ、周期と光学特性変調との関係を明らかにする。 光学特性とともに、ナノポアアレイ形成による電気的特性の変調が可能かの検討を行う。そのための基盤となる極薄シリコン層によるトランジスタ構造の作成を行い、チャネル領域にナノポア形成を行って、電気的特性を取得する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度には、シリコンウェハのプロセスを行う予定であった共用施設の稼働が遅れたため、熱酸化によるシリコン層薄膜化などのプロセスが行えなかった。この施設は令和4年度末には稼働したため、予定していたシリコンウェハの作成プロセスは令和5年度に後倒しして行う。
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