研究実績の概要 |
(1)スピン波量子干渉素子による高感度化磁気検出 スピン波干渉を用いた超高感度磁気センサを実証した。代表的なスピン波伝搬材料であるガーネット鉄酸化物Y3Fe5O12:YIGの固有雑音が、理論的見積もりから室温において10-15T/√Hz(γ, V, Mは磁気回転比,磁性体の体積,磁化)であり、SQUIDの310×10-15T/√Hzに匹敵することを明らかにした。 またNiimiらのデータ(Phys. Rev. Lett., 2015)を参考に、スピン波干渉素子の理論上の磁場感度はattoT(10-18 T)と見積もられた。これらの知見をもとにPLD非平衡材料合成手法により、フェリ磁性誘電体(ガーネット型鉄酸化物Re3Fe5O12(Re:希土類)薄膜およびスピネル型鉄酸化物((TM,Fe)3O4)(TM:遷移金属)を形成し、スピン波(スピン角運動量)干渉素子を作製して磁気検出を実施した。その結果、既存の磁気センサ(ホール素子や磁気トンネル抵抗素子)と異なり、電子輸送が伴わないためジュール熱損が無く熱雑音が低減し、nTレベルの高感度スピンの検出に成功した。
(2)微弱なスピン情報を常温環境で検出するため、生体システムに学んだ情報処理原理(確率共鳴原理)を取り入れた高感度検出機能を設計した。環境ゆらぎである熱雑音と同レベルの低エネルギーで確率的に動作する情報処理を行っており、 この発想による超高感度センサのデバイス設計を実施した。
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