研究課題/領域番号 |
22K18809
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
粟辻 安浩 京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 教授 (80293984)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | 計測工学 / 可視化技術 / ホログラフィ / 音波 / 高速度イメージング |
研究実績の概要 |
音波の伝搬ならびにその音波を構成する各周波数が伝搬する3次元の様子をナノメートルオーダーで計測が可能な技術を創生することを目的として,3次元画像表示技術であるホログラフィを応用した計測法の創成し,その実証システムを設計・構築した.また,構築したシステムにより,複数の音波源から同時に発せられ伝搬する異なる周波数の音波を同時に記録し,異なる周波数の音波ごとに伝搬する様子を動画像として選択的に再生する能力を実証した. 目的とする技術を実現するために,記録物体を音波とするマッハツェンダ干渉計を利用するディジタルホログラフィシステムを設計した.音源にはスピーカ,光源には連続波レーザ,ホログラムの記録には偏光高速度カメラを用いてシステムを構成した. 3台のスピーカからそれぞれ39.5kHz,40.0kHzと40.5kHzの周波数の音波を同時に発してその伝搬の様子を構築システムにより毎秒10万コマの速度で記録した.記録した動画から各音波の複素振幅動画を再生した.その結果,3つのスピーカから発せられ空気中を伝搬する音波の同時動画イメージングに成功した.さらに,3つのスピーカから発したそれぞれの音波が同時に伝搬する様子の位相動画像を再生した.得た位相動画像に対して各画素の画素値の時間変化に対して時間的にフーリエ変換し周波数フィルタリングすることで位相動画像の時間周波数を求めた.求めた位相変化の時間周波数から,それぞれのスピーカから発せられる音波の周波数を求めた.その結果,周波数を指定することにより,3つの音波が同時に伝搬する動画像から,それぞれのスピーカから発せられる音波の伝搬の様子の選択的動画像イメージングができることを実験的に確認した.このことから,複数の周波数の音場に対して,周波数ごとに音場が伝搬する様子の動画像を再構成できる技術である「分音映像技術」を創生できたことを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題である音場のナノ分解能高速度スペクトロスコピック動画像計測技術を創生し,本技術に基づく実証装置の基本光学系の設計と構築ができた.また,構築したシステムを用いて,複数のスピーカから発せられる複数の音波伝搬の同時動画像記録に成功し,当初の計画を達成した.さらに研究を加速することで次年度での実現を計画していた,複数周波数を含む音波の伝搬動画像から指定した周波数成分ごとの音波の伝搬の様子をコンピュータで解析するアルゴリズムを開発できた.また,開発したアルゴリズムをコンピュータプログラムとして実装し,周波数成分ごとの動画を再構成する周波数選択的動画像イメージングを実現できた.以上の成果が得られていることにより,本研究課題は当初の計画以上に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
初年度に構築した音場のナノ分解能高速度スペクトロスコピック動画像計測システムでは,指定した周波数ごとに,音波の伝搬の選択的動画像イメージングを実現する光学系を構築した.次年度は,構築したシステムで得られた選択的に動画像としてイメージングされた周波数成分ごとに異なる色で表示できるような像再生プログラムを実装し,1つの動画像中で,異なる周波数の音波の空間分布を識別できるようにシステムを改良する. また,構築したシステムを用いて,1つのスピーカから発する音波の周波数を変化させた場合の周波数選択的音場の動画像イメージングを行う.その上で,1つのスピーカから複数の周波数を含んだ音波を発した場合の周波数選択的音場の動画像イメージングを行う. さらに,スペクトロスコピック動画像計測技術の応用として,構築したシステムを用いて種々の周波数選択的動画イメージング応用を行う.一例として,動的な媒体中を伝搬する音波に対して,音波の伝搬と媒質の動きの同時に動画像として記録する.さらに,記録された動画像から,音波の伝搬と媒質の動きについて,それぞれ分離した動画像のイメージングの可能性を試験する. 最後に,本研究全体を総括するとともに,得られた知見をまとめて,総括と展望を行い,システムの更なる高性能化を目指して,音場のナノ分解能高速度スペクトロスコピック動画像計測技術に対する示唆を与える. 研究協力者としてホログラフィの記録について高度な知識を持つ神戸大学 的場修教授,千葉大学 角江崇助教,産業技術総合研究所研究員 夏鵬博士,株式会社久保田ホログラム工房 久保田敏弘博士,京都工芸繊維大学 Sudheesh Kumar Rajput博士研究員と議論ならびに助言を受けながら研究を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題の実験系において,光学系をより高精度に微調整することが必要であることが研究期間中に分かった.また,その微調整のための機構についての検討も必要であることが研究期間中に分かった. 本研究課題の実験系において光学系をより高精度に微調整が可能な光学素子を購入する.
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