研究課題/領域番号 |
22K18816
|
研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
山本 真人 関西大学, システム理工学部, 准教授 (00748717)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
|
キーワード | 二次元物質 / 相転移物質 / 振動子 |
研究実績の概要 |
2022年度は振動子への応用展開を視野に入れ、急峻かつ巨大な抵抗変化を伴う絶縁体-金属相転移を示す二酸化バナジウム(VO2)の合成を試みた。具体的な方法としては、過去の研究において単結晶VO2の合成が報告されている化学気相成長(CVD)法を採用した。基板としては、厚さ285 nmの熱酸化膜付きシリコン(Si/SiO2)を用いた。CVD成長の原料はVO2粉末とした。VO2は蒸気圧が比較的低いため、Si/SiO2基板をVO2粉末に面するように置きCVD成長を行った。その結果、Si/SiO2基板上にマイクロスケールのVO2フレークを高密度で形成することに成功した。 VO2は絶縁体から金属に相転移する際に複素屈折率が変化するため、色の変化によって相転移温度を見積もることができる。そこで、CVD成長によって得られたVO2フレークを光学顕微鏡で観察したところ、本来VO2の相転移が起こる340 K近傍では完全に色が変わらず、400 K以上でも縞状の絶縁体相が維持されていることが分かった。次にラマン分光法によって絶縁体相の結晶構造を同定したところ、本来のM1相ではなく、歪みとともに相転移温度が高くなるM2相が形成されていることが分かった。このM2相を安定化させている歪みは、VO2とSiO2の熱膨張率の差によって生じたものであると考えられる。 次に、CVD成長によって得られたVO2フレークの抵抗-温度特性を調べたところ、単結晶性に由来する急峻な絶縁体-金属相転移を示すことが分かった。さらに、VO2フレークに電圧を連続的に印加したところ、ジュール加熱による絶縁体-金属相転移も観測した。2023年度は、CVD合成したVO2において電圧振動現象の観測を試みるとともに、VO2と二次元半導体をヘテロ構造化させることでゲート制御可能な振動子を作製する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
振動子への応用が見込まれる高品質なVO2単結晶の合成に成功したため。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度はまず、CVD合成したVO2フレークと外部抵抗を接続することにより電圧振動現象の誘起を試みる。次に、VO2フレークと二次元半導体をファンデルワールスヘテロ構造化し、二次元半導体をチャネル、VO2を電極とするトランジスタを作製する。そして、ゲート電圧印加により二次元半導体の抵抗値を変調させ、VO2における電圧振動の周波数制御を行う。最終的に、複数のVO2振動子を六方晶窒化ホウ素によってカップリングさせ、集団同期現象を実現する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初、10 fAまで測定可能なプレシジョンソースメジャーユニットを購入する予定であったが当該製品の販売価格の高騰により購入が困難となった。そこで、より安価な100 fAの解像度のソースメジャーユニットを購入したため当初計画との差が生じた。2023年度は、繰越金と助成金を合わせることでVO2の電流―電圧特性を多角的に計測可能な真空プローバーを導入する。
|