研究課題/領域番号 |
22K18842
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
大風 翼 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (40709739)
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研究分担者 |
吉村 奈津江 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (00581315)
丸山 裕恒 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 特任助教 (50913258)
玄 英麗 東京工芸大学, 工学部, 助教 (20770564)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | 脳波 / 風 / 心地よさ感 / 屋外 / 信号源推定 / 独立成分分析 |
研究実績の概要 |
1年目は、開けた屋外空間で実験参加者の脳波を取得しつつ、体感した風の主観的な心地よさ感を申告するアンケートを実施し、データを取得した。続いて、得られた脳波の信号源推定を行い、心地よさ感のアンケート結果と合わせて分析を行った。具体的には以下の通りである。 1)屋外環境での脳波取得実験 2023年10月に、東京工業大学すずかけ台キャンパスのグラウンドにおいて、体感した風の主観的な心地よさ感と脳波を取得する実験を行った。実験参加者は、20代の健康な男女とした。目を閉じて自然風を6秒間感じた後、風の心地よさ感などを回答する過程を1トライアルとし、計120トライアルを実験参加者に課した。この間、実験参加者は、脳波計を装着し、電極を国際10-20法に則って配置した64個の電極で脳波を取得した。周辺の環境は、3次元超音波風速計、温湿度センサー、グローブ温度計を用いて計測した。実験中、実験参加者にはノイズキャンセリングイヤホンを着用させ、環境音の影響を受けないように配慮した。 2)脳波解析 取得した脳波データに対して、独立成分分析を用いたダイポール推定により信号源推定を行った。参加者が目を閉じて風を感じている6秒間の脳波データを解析の対象とし、心地よさ感の申告の偏りで2標本検定が成り立たないデータは、解析対象から除外した。独立成分クラスタリングによって複数の参加者に共通の性質を持つ独立成分をクラスターに分け、風を心地よく感じたのときとそうでないときの脳波の独立成分のパワースペクトル密度を求め、各々の周波数帯域で平均値に統計的に有意な差があるか、対応のある2標本t検定を行った。分析の結果、後頭の領域などにおいて、有意差あるいは有意傾向がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の影響で、一部の人工気候室内での室内実験のための予備計測は次年度に延期したものの、本年度の大きな目標であった屋外環境での脳波取得実験は滞りなく実施でき、十分なサンプルを得られており、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2年目では、人工気候室内において、温熱環境制御下で実験参加者に曝露させる風速を変化させつつ脳波を取得し、機械学習により得られた脳波から心地よさ感の推定の可能性を探る。具体的には、以下の通りである。 1)人工気候室内での脳波実験 中間期の屋外環境を想定し、人工気候室内の温湿度環境を調整する。実験参加者を、入室後、30分程度安静に着席させ、環境に順応させる。発生させる風速は4段階程度とし、ランダムに発生させる。実験参加者には、屋外実験と同様に、脳波電極キャップを装着させ脳情報を計測し、風の心地よさのレベルをタブレットPCで逐一報告してもらう。実験中、実験参加者にはノイズキャンセリングイヤホンを着用させ、ファンの音の大小で曝露する風速の大きさを推定されないように配慮する。実験参加者各々について、10秒程度風に曝露させた後、心地よさ感を回答するまでを1トライアルとして、120トライアル程度実施する。 2)脳情報デコーディングによる風の心地よさ感推定の可能性の検討 取得した脳波データに対して、独立成分分析を用いてノイズを除去し、脳の部位ごとの脳波のパワースペクトルを得る。環境を制御した人工気候室内のデータを用いて、脳の部位ごとのパワースペクトルを入力変数、心地よさ感を出力変数とし、機械学習により心地よさ感を推定する分類器を作成する。これを用いて、1年目に実施した屋外空間でのデータに適用し、心地よさ感の推定精度の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で一部の室内実験を2年目に延期したため。室内実験での計測器のプローブや消耗品等の購入に使用する計画である。
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