研究課題/領域番号 |
22K18845
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
寺本 篤史 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (30735254)
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研究分担者 |
森 拓郎 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (00335225)
石山 央樹 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (90634436)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | 微生物 / 建材 / コンクリート / 木材 / 湿式スワブ法 / pH |
研究実績の概要 |
本研究では微生物が吸着しやすい多孔質材料に着目し,最も代表的な建築材料であるコンクリートおよび木質材料について,①微生物環境に影響を与える材料学的条件(主として空隙構造と表層の含水率,およびpH)と,②病原微生物が繁殖しにくい材料および環境条件(主として相対湿度,換気量)を明らかにすることを目的としている。 2022年度は,材料学的条件に関して,含水率が異なる各種建材に対して,同一の手法でpH測定を実施する方法について検討を実施し,測定方法を確定した。建材上の微生物の採取方法に関しては,湿式スワブ法で採取可能な微生物量や種類が建材種類の影響を明らかにするため,木,コンクリート,防水ボードを対象として湿式スワブ法に依る採取効率の検討を実施した。その結果,建材種類間で採取効率に極端な差異が生じないこと,建材表層に生息する菌の2割程度を採取できること,吸水により内部へ移動した微生物は採取できない可能性があることが明らかになった。 また,建材上での微生物の繁殖状況を確認するため,木材(スギ,マツ,ヒノキ),セメント系材料(W/C=55%,250%,300%),せっこうボード(普通,防水,化粧)の9種類の材料を対象として,Escherichia coli,Bacillus subtilis natto,Grifola frondosaの3種類の微生物を接種し,相対湿度75~95%の条件で,各微生物の増殖の状況を確認した。その結果,建材種類によって微生物の増殖の程度が異なることが確認された。本研究では今後,建材上の微生物の定性および定量評価を実施し,各種建材の物理特性との相関性の解明に取り組む予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
木材およびコンクリートを対象として,それぞれの建材表層部で生息する微生物群集の傾向と,それを決定する材料学的な条件を明らかにすることが本研究の目的であり,2022年度は,木材,コンクリートにせっこうボードも加えた条件で,固有の微生物の増殖状況を観察,評価可能な研究体制を構築した。
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今後の研究の推進方策 |
建築材料の空隙内部に生息する微生物のサンプリング方法は確立されていないため,2022年度は,湿式スワブ法による微生物の採取効率について検討を実施した。2023年度は,本方法および,建材試料を粉砕し,DNA抽出を行う手法について検討を実施し,1)試料の必要採取量,2)試料径(破砕方法),3)必要なDNA抽出溶液を明らかにする。採取したDNAサンプルを用いて16S rRNA,および18S rRNA遺伝子配列のシーケンスにより,存在する微生物の構成種類,量,構成比を明らかにする。以上で得られる微生物群集構造のデータと建材の材料特性との相関性を明らかにする。また,空隙径,含水率,空隙水のpHを制御した試験体を作製し,各種微生物を接種し,その後の微生物の生息状況の経時変化から微生物の材料選択性を確認する。 本申請では,多孔質材料であるコンクリートと木質材料から研究を開始しているが,2023年度は,これに加え,せっこうボード,タイル等の内外装材についても展開していく予定である。
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