研究課題/領域番号 |
22K18850
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研究機関 | 新潟工科大学 |
研究代表者 |
富永 禎秀 新潟工科大学, 工学部, 教授 (00278079)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 雪庇 / 粒子画像法 / 粒子追跡法 / メカニズム / モデリング |
研究実績の概要 |
建物の軒先などの風下に雪が張り出す雪庇(せっぴ)は、軒先への局所荷重の増加、崩落による人身事故や設備機器の破損などにつながることから積雪地域の耐雪建築設計における重要な課題の一つである。雪庇は降雪と一定の風向・風速によって形成されることが知られているが、雪質や乱れ性状が寄与しているとも言われ、その発生のメカニズムは十分明らかになっていない。本研究では、ステレオPIV(Particle Image Velocimetry:粒子画像法)(オイラー的な計測)とPTV(Particle Tracking Velocimetry:粒子追跡法)(ラグランジュ的な計測)を融合した計測システムを構築して、屋根上の雪庇形成を支配する雪粒子と流体の相互作用的挙動を捉え、その形成メカニズムを解明することを目指す。 まずは研究の基礎となるPIV・PTV融合システムの構築に取り組んだ。新潟工科大学の大型境界層風洞内に2次元PIVおよびステレオPIVを設置して、直方体建物モデルなどの基礎的な流れ場を対象として、高精度の計測手法を構築した。また本学が所有する小型の回流水槽と珪砂を用いて、雪の飛散・堆積を模擬したPIV・PTV計測を行い、粒子追跡による計測精度と流速の関係について考察し、今後に活かせる知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね予定通りの進捗状況であったと考えている。研究の初年度ということで、まずは基本的な文献調査を行い、雪庇のモデリング研究のレヴューを行った。その結果、建築物における雪庇形成のメカニズムについての研究は非常に少なく、モデリングのパラメータの抽出がまずは重要であるとの知見を得た。平行として本研究の基礎となるPIV・PTV融合システムの構築に取り組んだ。新潟工科大学の大型境界層風洞内に2次元PIVおよびステレオPIVを設置して、直方体建物モデルなどの基礎的な流れ場を対象として、高精度の計測手法を構築した。また本学が所有する小型の回流水槽と珪砂を用いて、雪の飛散・堆積を模擬したPIV・PTV計測を行い、粒子追跡による計測精度と流速の関係について考察し、今後に活かせる知見を得た。 さらにモデル検証用データ収集のためのフィールド実測調査を、長岡市の防災科学技術研究所・雪氷防災研究センターの露場において引き続き実施した。今冬の降積雪状況は、昨年に比べると小雪であったが、集中的な降雪があり、雪庇形成・発達過程についても映像として貴重な観測結果を得た。これらの蓄積されたデータは今後の研究に大いに活用できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には、当初計画の方法で研究を推進する予定である。構築したPIV・PTV融合システムの構築の実際の雪粒子の計測への適用性を確認し、必要な改良を加える。またこれまでの成果を基に、雪庇形成のモデリングに必要なパラメータを分析し、それらを踏まえた実験計画を策定する。それを踏まえ、防災科学技術研究所・雪氷防災研究センター・雪氷防災実験棟の風洞を用いた実験を行い、検討に必要なデータを得る。 また最終的な目標である実環境での雪庇形成モデリング精度を検討するためには、観測結果との比較・検証が不可欠である。防災科学技術研究所・雪氷防災研究センターの露場における準実大スケールの建物モデルを用いた屋外観測を実施することによって、基礎的なデータも蓄積していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた実験の一部が、新型コロナウィルスの関係で延期となり年度内に実施できなかったため、次年度に延期することとした。その実験用に予定していた消耗品、模型材料費などを次年度に使用することにしたため。
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