最終年度では,初年度に製作した電力などの動力源を一切用いず熱源のみで駆動するパッシブ冷凍機の検証用試験機を用いて,冷凍原理の検証及び独自に開発した物理モデルの高度化を目的に,作動流体の混合比(冷媒,吸収液,補助ガスとの混合比)や重力依存性を確認するための設置姿勢,バブルリフト効果により循環力を生み出す受熱部内の流路構造,冷媒と吸収液を分離させる気水分離器や補助ガスと冷媒を分離する吸収器形状など,放熱条件を含め冷凍性能に与える影響について実験による総合的な検証と予測モデルの妥当性確認(V&V)を行った.高さ570mm幅450mm奥行300mm程度から成る検証用冷凍試験機において,作動流体に冷媒としてアンモニア・吸収液として水(アンモニア水濃度30%)・補助ガスとしてヘリウム系を用いた場合には,中低温排熱(200℃以下)の温度条件下においても熱負荷200Wまで安定動作を確認するとともに冷却性能指数(入力熱源に対する冷却量)COPは0.1以上,外界温度25℃に対して冷却温度は氷点下を達成し,提案する予測モデルと概ね良好な一致を示した. 宇宙機熱制御に適用することを目的に,妥当性確認を行った本予測モデルを用いて,月面などの低重力下(地球の約1/6)での動作性能予測シミュレーションを実施した結果,動作可能であること確認するとともに,輸送距離増長のボトルネックとなる物理現象を解明し,小型軽量化や起動特性の向上,高性能化に向けた設計指針を得た.
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