研究課題
我が国が得意とするサンプルリターンミッションにおいては、取得した天体試料が地球生命圏に危機的な悪影響を及ぼさないように、高い安全性を確保することが求められる(復路惑星保護)。近年、地球外生命が存在する可能性のある天体(火星、エウロパ、エンケラドス)およびその近接天体への探査が検討される中で、母天体における隕石衝突によって放出された岩石(エジェクタ)が近傍天体へ輸送され到着時に高速衝突する際に、これに付着している可能性のある微生物がどの程度不活性化されるか、という点を正確に評価する必要があるが、これを定量的に評価することは技術的に極めて困難であるため、これまで信頼に値するデータセットが存在しない状況であった。そこで本研究では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)調布航空宇宙センタ(CAC)が所有する二段式軽ガス銃(φ15 mmのプロジェクタイルを最大速度4.2 km/sで射出可能)を改修することによって、清浄度管理した軽ガス銃による高速衝突実験が実施可能な試験環境を開発し、微生物の高速衝突における不活性化率の統計的データセットを世界で初めて高速度領域まで取得する技術を獲得した。軽ガス銃によって、エジェクタを模擬して微生物を包埋した玄武岩のプロジェクタイルを射出し、ターゲットであるレゴリス模擬土壌へ高速衝突させるために、バレルにライフル加工を施工し、プロジェクタイルを支持するサボがバレルから放出された後に遠心力によって分離されるような工夫を導入することで、真空環境下においてもサボが分離されプロジェクタイルのみが模擬土壌へ衝突するような技術を獲得した。上記試験環境を用いて、先行研究においてPatelらが取得した速度1.5 km/sよりも高い速度域である3 km/s程度まで試験条件を拡張して衝突実験を行い、代表的な複数の菌種に対して、高速衝突による不活性化率を計測することに成功した。
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