2022年度の研究では、CSMT法による電磁探査(A側線)によって新潟県上越市牧区の沖見地すべり地周辺における地質・水文状況、とくに地下に賦存する化石海水と考えられる超低比抵抗体の分布状況が把握できた。しかしながら、当初の想定とは異なる結果が得られたため、2023年度は探査測線を変更し、CSMT法電磁探査(B側線)を再度実施した。ここで、2022年度のA側線(測点A1~A8)は、本地すべりの頭部を通過し、かつ地質構造に直交する測線として設定された。2023年度のB側線(測点B1~B5)はこのA側線に直交し、本地すべりの中~下部を通過するように設定された。 CSMT探査は、人工的に発生させた数 Hz~数 kHzの電磁波を用いた探査法で、地下数10~2000 m付近までの地下深部の比抵抗値(電気抵抗値)測定し、解析によって空間分布を可視化できる。可視化された比抵抗値を用いると、地盤の中の地質状況(割れ目・断層の有無、岩相の差異など)、さらに地下水の分布状況を推定できる。 探査の結果、B側線の地下には主に20 Ω・m以下の低比抵抗値の低い領域が広く分布していた。とくに測点B2~B3の標高+150 m~-150 m付近には2 Ω・m以下の超比抵抗領域が傾動した“壺”のような形状で分布していた。B側線は地層の走向方向に設定されたため、超比抵抗領域の形状は地質や地質構造の差異に起因するとは考えにくい。この形状から、高濃度NaCl型地下水(化石海水)の貯留層(“塩水溜まり”)を検出したと考えている。 A側線とB側線の探査結果を考え合わせると、本地すべりの西側の地下100 m~300 mに存在する“塩水溜まり”から地すべりの底部に向かって湧昇する塩水プルームが識別できる。
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