研究課題
一般に、マルテンサイト(M)変態は冷却時に無拡散的に母相→M相の正変態が生じるが、代表者らは、CoCrGaSi形状記憶合金において冷却で母相→M相→母相の挙動を示す異常なM変態を報告し、リエントラント形状記憶合金と命名した。リエントラント形状記憶合金は学術面でも応用面でも大きな意味を持つが、その実現条件が厳しく、その結果、今のところ、CoCrGaSi合金でしか見つかっていない。本研究は素材コストの低いMn基合金に注目し、より安価である第2のリエントラント形状記憶合金の創製に挑戦する。本研究の2年目はまず1年目で実験的に決定したMnZn2元系状態図の論文を掲載した。さらに、この2元系状態図に基づき、Mn50Zn50付近の合金を用いて組織観察を行った結果、bcc->hcp変位型相変態が生じていることを判明した。しかし、この変位型相変態は熱弾性型マルテンサイト変態ではなく、さらに、逆変態を得るために加熱を行うと安定相であるβMn相が析出するため、このままでは利用できない。第3元素添加を試してみたところ、Cuを添加することでβMn相の析出が大幅に抑えられることを判明し、系統的な調査を行った。その結果、Cuを添加したMnZnCu合金において、DSCによる加熱中に吸熱反応が出現し、組織観察を行ったところ、変位型相変態の特徴を示す組織の割合が増え、bcc→hcp変位型相変態が加熱中に進行することが分かった。さらに調査を進めたところ、新たに生成したhcp相はbcc母相と僅かな組成差を有することが分かった。すなわち、Cu添加MnZn合金はリエントラント・マルテンサイト変態こそ実現できなかったものの、加熱中にベイナイト変態の正変態に類似した相変態が生じていることがわかり、MnZn系合金はリエントラント形状記憶合金になる可能性があることが分かった。
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Journal of Phase Equilibria and Diffusion
巻: 45 ページ: 3~17
10.1007/s11669-023-01068-6