研究課題
初年度は、層状2DSnSeと岩塩型3DPbSeの非平衡固溶体(Pb1-xSnx)Seについて、エピタキシャル薄膜の作製とキャリア輸送特性の評価を行い、次いで薄膜トランジスタの試作まで行った。まず、パルスレーザー堆積法によりPbSeエピタキシャル薄膜/SnSe多結晶膜の2層膜をMgO(001)単結晶基板上に成膜させた。その後、Ar雰囲気の石英ガラス管に封入して、高温で固相反応させた後に急冷し、高温非平衡相(Pb1-xSnx)Seを室温に凍結させた。各PbSe/SnSe膜の成長条件と熱処理温度を最適化することで結晶配向性を大きく向上させることができた。また、Sn組成xの増加に伴って2D-3D構造転移温度が上昇し、最大で5桁を超える巨大な抵抗変化を示す(Pb1-xSnx)Seエピタキシャル薄膜を作製することに成功した。X線回折の温度依存性から、室温では3D構造相の分率が100%であったのに対して、降温とともに3D構造から2D構造へ相転移し、20Kでの2D構造の相分率は92%に到達した。その後、140Kまで昇温すると再び3D構造へ転移して元の相分率に戻ることが分かった。次に、相境界組成の(Pb0.5Sn0.5)Se薄膜を用いた薄膜トランジスタを作製した。具体的には、メタルマスクを用いて(Pb0.5Sn0.5)Se薄膜の活性層を形成し、イオン液体をゲート絶縁層とする強電界印加が可能な電気二重層トランジスタを作製した。負のゲート電圧を印加することで、約3桁抵抗が減少し、電圧をOFFすることで元に戻ることが確認され、印加電圧の大きさによって抵抗変化率を制御できることが分かった。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、非平衡(Pb1-xSnx)Seエピタキシャル薄膜の作製・評価と薄膜トランジスタの試作まで進めることができた。
今年度に実現した(Pb1-xSnx)Seエピタキシャル薄膜と薄膜トランジスタについて、2D-3D構造転移による電気抵抗・熱伝導率の変化とサイクル特性を評価していく。
電子部品の調達が遅れており、デバイス評価の関連設備の導入を次年度に行う予定である。また予定していた国際会議に参加できなかったことから旅費に残額が生じたが、来年度は国内・国際会議で積極的に成果発表する予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (14件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
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