研究課題
本研究では、(Pb1-xSnx)Se固溶体のエピタキシャル薄膜を作製し、2次元-3次元(2D-3D)構造転移による巨大な電気伝導度と格子熱伝導度の変化を利用した熱伝導率スイッチング素子の開発に挑戦した。まず、高温相を室温に凍結させる非平衡合成法により、(Pb1-xSnx)Se単結晶薄膜を作製した。パルスレーザー堆積法によりSnSe配向膜/PbSeエピタキシャル膜の2層膜をMgO(001)単結晶基板上に成膜し、Ar雰囲気の石英ガラス管に薄膜試料を封入して、高温で固相反応させた。その後に高温から急冷し、高温非平衡相(Pb1-xSnx)Seを室温に凍結させた。SnSe層とPbSe層の膜厚を変えて、xを制御した(Pb1-xSnx)Se膜の電気特性を調べたところ、xの増加に伴って3D相から2D相(2D相から3D相)への構造転移温度が100Kから180K(250Kから300K)まで増加させることができ、最大x=0.58の薄膜試料において、約7桁の巨大な抵抗変化を実現した。次に、相境界組成の(Pb0.5Sn0.5)Se薄膜を活性層に用いて、イオン液体をゲート絶縁層とした電気二重層トランジスタを作製した。ゲート電圧印加前では温度130K以下の温度で3D構造から2D構造への転移によってシート抵抗が3桁増大した。最大で+5Vのゲート電圧を印加したところ、電子蓄積によって高温側(3D構造)のシート抵抗が僅かに増加した。一方で、最大で-5.0 Vのゲート電圧を印加したところ、低温側(2D構造)のシート抵抗が1/331に大きく抑制されることが分かった。3D相と2D相の2層モデルを用いてシート抵抗変化を解析したところ、最大-5Vの印加で8.3nmの領域で高抵抗2D相が低抵抗3D相へ変化したと考察した。以上の結果から、電界印加によって2D-3D構造転移をスイッチし、2桁の抵抗変化制御を実現した。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (25件) (うち国際学会 13件、 招待講演 6件) 備考 (1件)
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