研究課題/領域番号 |
22K18884
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
村井 俊介 京都大学, 工学研究科, 助教 (20378805)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 表面プラズモン / ナノアンテナ / 光マネジメント / Mie共鳴 / キラリティ |
研究実績の概要 |
ナノサイズの金属粒子を基板上に周期的に並べた2次元構造は、光を平面内に強く閉じ込めたり、特定の方向へ集めたりする性質があります。このような構造はメタ表面と呼ばれ、先端の光技術として研究が進んでいます。このメタ表面技術、様々な応用ができると期待されるのですが、どんな基板の上にも作製できるわけではありません。高度な複数の工程を経て作製するため、すべての工程に適合する材質や形状に厳しい制限があります。この制限はメタ表面の応用を妨げるものです。代表者は、この問題を解決し、多くの材料に自由に貼れて機能を発揮する“メタ表面シール”を開発しました。2021年度終了時点で、AlおよびSiナノアンテナシールの作製しに成功していました。2022年度の研究で、新たに銀ナノアンテナシールを開発しました。ナノ粒子の周期的な配列がエラストマーフィルムに埋め込まれたナノアンテナステッカーは、ターゲット材料の表面に簡単に着脱でき、光を制御するナノアンテナとして機能します。 ステッカーは、ナノインプリントリソグラフィーとそれに続く転写プロセスによって製造できます。 アルミニウムナノアンテナステッカーは、転写プロセス中に水に溶解する犠牲層としてポリ(ビニルピロリドン)(PVP)を使用して調製されていますが、銀とPVPの接着力が弱いため、銀ナノアンテナの転写は困難でした。 この作業では、銀と PVP の間に薄いアルミニウム層を配置すると、銀ナノアンテナがエラストマー フィルムにうまく転写されます。 発光層にステッカーを配置することにより、フォトルミネッセンスのアウトカップリングを示します。 放射パターンは、ナノアンテナ ステッカーによって定義された方法で空間的およびスペクトル的に変調されます。 正面方向のフォトルミネッセンスを強化する能力は、同一形状のアルミニウム ナノアンテナ ステッカーよりも強力でした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
メタ表面シール”のツイストメタ表面への応用に関して、ナノアンテナとして可視光域での高い屈折率と低い光吸収を併せ持つ酸化物ナノ粒子の周期アレイ構造を選択し、PDMSフィルムへの埋入と犠牲層の溶解による転写を検討しました。2枚のシールを時計回り、反時計回りに回転させ貼り合わせた際に得られたCDスペクトルは互いに鏡像に近い挙動を示しました。したがって、同一の周期構造を持つナノアンテナシールを重ね合わせることで構造にキラリティを持たせることができました。さらに銀ナノアンテナシールの開発にも成功したため、この区分としました。
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今後の研究の推進方策 |
より高性能な酸化物ナノ粒子ナノアンテナシールの開発:転写に必要な犠牲層には、ナノアンテナ材質および基板との密着性と水溶性が求められます。これまで有機ポリマー系の犠牲層を開発してきましたが、特にナノアンテナ粒子が大きい設計ではナノアンテナ材質層がインプリントモールドに密着し基板から剥がれてしまう問題がありました。現在最高性能が出ている酸化物のナノアンテナはナノ粒子が大きく、同じ設計でシールを作ることには成功していません。本項目では犠牲層を基板と酸化物の両者と相性がよくかつ水溶性である化合物を用いこの問題を克服します。 積層メタ表面への展開:キラリティ付与や発光制御に関して、メタ表面上にシールを貼った積層構造の活用について検討します。
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次年度使用額が生じた理由 |
ナノ加工プロセスの最適化が当初予想より早く進み、物品費に計上していた金額より少ない金額で最適化が達成出来たため2022年度使用金額が当初予定を下回った。2023年度は引き続き新たな加工プロセスの開発と最適化に予算を使用する予定です。また予算の一部はプロセス最適化に関するポスドク雇用に使用予定です。
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