金属スカンジウムはアルミニウムに少量添加することで機械的強度や溶接性を飛躍的に高めることのできる大変有用な金属である。しかし現状の金属生産方法は高温乾式プロセスに限られ、中低温での湿式プロセスについての検討は十分でない。本研究では非水溶媒を用いたスカンジウム電析に挑戦した。 溶媒として安全性が高く安価なグライム類に注目した。スカンジウム塩として、酸化スカンジウムから容易に製造が可能な塩化スカンジウム(ScCl3)を用いた。 まず、溶解性に関する基礎データを収集した。溶解度は,最大0.3 mol/L程度であった.LiClを添加した系については,ScCl3 : LiClの比率を変更しても溶解が確認されたことから、複数種の錯体の存在が示唆される結果を得た。 溶解が確認された系について電気化学的挙動を調べた。ボルタンメトリーにおいて、スカンジウムの析出に対応すると思われる還元電流を観測した。しかし定電位電析試験において、金属スカンジウムの析出を裏付けるデータは得られなかった。定常的に大きな還元電流を得るためには今後さらなる検討が必要である。 上ではグライムを配位子として用いる金属電析を検討したが、金属電析における一般的課題として、排水処理や使用後の浴からの金属成分の相互分離回収があげられる。すなわち、新しい浴を考える上では、配位子の分解を必要としない、より簡便かつ省エネルギーな廃液処理および有価金属回収に資する浴設計も必要であるとの認識に至った。ケーススタディとして、濃厚塩化カルシウム水溶液をベースとしたスズ-銀合金電析浴を新規に設計し、金属成分の選択的回収に成功した。
|