研究実績の概要 |
本研究では、力学的メタマテリアルの新しいコンセプトとして原子模倣メタマテリアルを提案するとともに、応力誘起相転移する格子構造体に温度で変形するバイメタルを組み込むことで熱誘起相転移を発現させ、形状記憶特性を発現する4Dメタマテリアルという概念を提案した。これにより、特定の元素組成でしか発現し得なかった特性を他の元素で発現させることを可能とする設計につなげ、新たな4Dプリント手法の可能性を実証し目的を達成した。昨年度までに、アプローチ1として、立方晶系結晶構造を模擬し, 原子位置に球, 最近接結合位置に円柱梁を配置した格子構造体を作製し, その弾性異方性と立方晶系結晶性物質の弾性異方性の対応関係を調査した。今年度は、ダイヤモンド構造、単純立方構造にも研究を展開した。共有結合で構成されるダイヤモンドやシリコンの弾性異方性は、第一近接結合のみを模倣した格子でおおむな再現できた。実在物質には存在しない単純立方格子の弾性異方性は、ポアソン比が小さく、Zener比も低い特徴を有している。この特性は、面心立方格子や体心立方格子にて第二近接結合の影響として反映されることが示唆される興味深い発見にも繋がった。一方、アプローチ2の研究として、バイメタル梁を組み込んだ相転移する格子(Thermally-Induced Phase Transforming Cellular Material:TI-PXCM)について有限要素法(FEM)により、相転移する温度と荷重との関係を評価し、温度-荷重状態図を作成することに成功し、4D形状記憶メタマテリアル設計の学術的基盤の構築を達成した。今後は、両アプローチの研究成果を融合することで、原子模倣4Dメタマテリアルの開発へと発展することが期待される。本研究は、その礎を築いたパイオニア的研究として位置づけられる。
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