研究実績の概要 |
カンター合金と呼ばれるCoCrFeMnNiハイエントロピー合金とAl合金の界面接合を拡散接合により実施し、得られた接合界面における反応層の形成ならびにミクロ組織・機械的性質を、鉄とAl合金の接合部(Fe/Al接合部)と比較した。Fe/Al接合部においては、Fe-Al系金属間化合物が厚く形成されたが、カンター合金/Al合金の接合界面においては、Fe/Al接合部に比べて薄い反応層が形成されることが分かった。種々の温度・時間で接合後熱処理を行い、反応層の成長挙動を調べたところ拡散律速であり、その活性化エネルギーはFe/Al界面よりも高いことが示されたことから、カンター合金/Al合金界面での低拡散効果が示唆された。カンター合金/Al合金界面の反応層のミクロ組織を調べた結果、Co, Cr, Fe. Mn, Niを含むAlリッチな4種類の化合物が層状に形成されることが示された。反応層自体のビッカース硬さを測定したところ、カンター合金/Al合金界面では約720HV、Fe/Al界面では約990HVであり、金属間化合物のハイエントロピー化に伴う硬さ低下が示唆された。カンター合金をインサート材として利用したFe/Al接合を実施した結果、Fe/カンター合金界面には約10μmの拡散層が観察され、カンター合金/Al合金界面にはAlリッチな化合物から形成される反応層が存在していた。引張試験の結果、Fe/Al継手では界面破断し、継手強度は約33MPaであったのに対し、Fe/カンター合金/Al継手ではAl合金側で破断し、継手強度が60MPaを超えるものもあった。以上の結果より、ハイエントロピ―合金の中には、金属との接合界面において低拡散効果と反応層のハイエントロピー効果が期待されるものもあり、良好な継手強度が得られない異種材接合のインサート材として効果的に作用しうることが明らかになった。
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